good night dear

sleep like a baby

20180703/BLESS THIS MESS@恵比寿 club aim

ブレメス感想

BLESS THIS MESSのワンマンライブへ行ってきました。

この日は「60分間限定無料ライブ」とめいうたれた本編と、プレミアムチケットを購入したひと限定のイベントの二本立て。まずは100点満点中53億点だった、本編のステージについて印象を書き記したいとおもいます。

というわけで、下書きなしの感想です。あとで読み返したらとっても恥ずかしくなっちゃいそうだけれど、いまの感情のまま書いてみますね。 harutsugedolly.hatenablog.com プレミアムライブの感想はこちらからどうぞ。

序盤

はやく始まってほしい気持ちと、この日が終わってほしくない気持ち。複雑な感情が入り乱れるなか、ステージを覆う黒幕が、ザッと真下に落ちました。「BLESS THIS MESS」と白抜き文字の記された黒地のドロップアウトをバックに背負う舞台上、まずはいつものとおり立石 恁さん(Gt.)とサポートドラムのHakuyaさん、Regaさん(Ba.)が続々と入場してきます。

最後に足を踏み入れた柳さん(Vo.)がセンターに立つと、この日最初に静寂を切り裂いたのは、泉の底から水が湧きあがるような美しいメロディーでした。

ずっとこのバンドを応援しているリスナーさんなら、いえ、きっとはじめて耳にする方でも反応せずにはいられない、もの悲しい音色。ながらく姿をひそめていた初期の名曲『slumber』、そのバラードによる幕開けに、たちまち会場内の空気が湿り気を帯びていきます。

両手で口をおさえる人、鼻をすする人、そうした景色がひろがる中、わたしもまた、ふかく俯きました。少しでも気を抜くと嗚咽が漏れてしまいそうで、肩を震わせてこらえるしかなかったのです。

この曲は、まだバンドが「Starwave Records」のレーベルに所属する前の時代に生まれたもの。柳さんが「今でも支えてくれるすべての人たちへ、遺作のつもりで」つくったファーストフルアルバム『Hymn』の収録曲です。

一年前、二年前のワンマンライブではかならず披露されるほどの人気があり、その度に会場を涙の色に濡らしていました。

そんな『slumber』を最後に生で聴いたのは、2017年の5月28日、前メンバーの蘭丸さん(Gt.)と駁さん(Ba.)が脱退したワンマンライブの日です。

終演後のドリンクカウンターで、当時のファンの人たちと話したことが、ふとまぶたの裏に浮かびます。「ねえ、これから誰がslumber弾くのかな」と切り出し、「誰が弾けるのかしら」と言い直したあの夜。ややあって「ジンしかいないでしょ」と、柳さんの親友の名前が返ってきた、あの夜。

そうだよね、と声を揃えながらも、とうぜんファンは何も干渉できず、ただ次の活動を願うしかなかったこと。その中でそれぞれが、別れの傷口を塞いでいくしかなかったこと。バンドの再始動と恁さんの加入が発表されて、柳さんにファンメールを送ったこと。

そこからやっとなのです。やっと、本当にやっと、今のブレメスの『slumber』を聴けた。もうもうもう、感無量なのです。

曲の前半部分にはほとんど演奏の聞こえない静けさが流れ、たとえるなら柳さんの独白めいた時間がつづきます。それが「この眠りに沈めて……この眠りに沈めて……」と悲痛なねがいを吐き出したその瞬間、それまで息をひそめていた楽器隊が一気に呼吸をして、音を鳴らすのです。

唇をきゅっと引き結び、からだいっぱいを使ってドラムを打ち鳴らすHakuyaさん。しっかと地面を踏みしめ、低音でバンドを底から押し上げるRegaさん。眉間に葉脈のような深い皺をきざみ、ギターの弦をかき鳴らす恁さん。

全員がフロントマンに寄り添い、支える、そのバンド感に、どうしても涙が止まりませんでした。報われた、浄化された、救われた、この気持ちをなんと表現したらいいのかわかりません。

ただ、ずっと応援してきてよかった。これからも応援したい。その気持ちがますます強まった瞬間でした。

中盤

やがてふたたび静寂へ近づくにつれ、柳さんはゆっくりと片手を胸に添え、仰々しい一礼をしてみせます。

ブレメスの活動初期を飾って色褪せない名曲の余韻だけがのこる中、しかし今度はカルティックな『蝋涙に死す。』が容赦なく叩きおとされ、会場を狂信的ないろ一色に塗り替えました。

蝋涙に死す。

蝋涙に死す。

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
「裁きをくれ……!!」と乞う柳さんの前にひろがるのは、対象者を見定めるようにゆらりと軌跡を残しながら揺れる、無数のヘッドバンギングです。ここから一瞬にして、狂騒の火蓋が切り落とされます。

疾走感を保ちつづけて駆ける『MIRROR MIRROR』、攻撃的なラップが炸裂する『Freak Show』と畳み掛けるそのあいまには、柳さんがフロアへ語りかけるひと幕もありました。

「やなぎやなぎやなぎーーーッ!!」
「じんじんじんじーーーん!!」
「れがれがれがーーーッ!!」
「はくやーーーッ!!はくやはくやーーーッ!!」

柵から身を乗り出してでもメンバーを求める声が鳴り止まないなか、ようやく柳さんが口を開きます。

「俺、今日、すげー楽しいよ。ライブがすげー楽しいよ!」
こうした心からの言葉は、公演中、何度も何度も聞かれました。

「好きに踊ってくれ!!」その声をきっかけにキャバレークラブの管楽器めいた音色が鳴りひびき、ダンスミュージック『PERSONA』の登場。またしても久しぶりとなる人気曲にリスナーさんたちは歓喜のどよめきをあげ、一斉に両手をあげて自由にからだを揺らします。
Persona

Persona

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
「Lost Venus……」と繰り返す声がしだいに攻撃的なシャウトへ変わるに合わせ、こちらも休みなしの高速折りたたみで応戦。恁さんはギターをかき鳴らしながらも、軽快な足さばきでダンスステップを踏み、フロアのボルテージはいよいよ増すばかり。

そうして新旧織り交ぜた曲がつづく中盤戦、今度は翌日リリースのミニアルバムより、表題曲『[blind Circus.]』が演奏されます。
blind Circus.

blind Circus.

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
前回いちはやく先行を聴いたときにもかんじたのだけれど、やっぱりこの曲の間奏はものすごくかっこいいのです。楽器隊の音が奈落の底からせり上がってくるような迫力で、無我夢中になって髪を振り乱しながら、音の世界に心酔してしまいます。

途中、ベースとギターがものすごく色っぽいところがあって、どの部分なのか、はやくCDを聴いて確認しなくちゃという気持ちに駆られています。

この「色気」というのは、新章ブレメスをあらわすひとつのキーワードなのかなと思っていて。ブレメスはどのメンバーさんに関しても、ストレートに官能的な言葉を使ってファンの扇情をあおるようなステージングはしません。

だけど大人の、歳を重ねた男性ならではの色香がむせかえるほど匂い立っているのですよね。

たとえばそれは、普段は腕組みをしてそっぽを向いている恁さんが、ふいにフロアを射抜く鋭い視線。マイク越しに落とされる柳さんの熱い息遣い、目の前にある顔をトントントン、と順に指し示す指先。歯をぐっと食いしばってベースを頭上に振りかぶったり、いきおいよく回転させるRegaさんの躍動感。

若さの肉が削ぎ落とされ、そのぶん「今」この瞬間を生きている者ならではの成熟した魅力が、色気として垣間見えるのかもしれません。

そこからつづくのは、塊のような音のつぶてをこれでもかと浴びせかける、攻撃的な『VENOM』。楽器隊陣の太くスリリングな音が、オーディエンスに迫ってきます。
VENOM

VENOM

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
前回はじめて先行を聴いたときには、目の前が真っ白になって「何が起きているのかわからなかった」のだけれど、この日は頭から最後まで、音を遊び尽くせてとってもたのしかったです。上手と下手へ駆け回るモッシュタイムにヘッドバンギング、会場の熱気はとどまるところを知りません。

またギターの音がすごいのです。対バンライブをするときの恁さんの足元は、画用紙に板チョコを2枚ぺたっと貼り付けたくらいのちいさな機材があるだけなのですが、今日はそれがもうちょっとした要塞みたいになっていて。

楽器や機材のことはお名前もなんにもわからないけれど、いつもは「ギュイーーン!!」な音が、この日は「ギュアラゴギグギュイイイイイン!!!」なのです。圧がすごいのです。

終盤

どの曲のあとだったか、柳さんがいったん下手へ捌ける瞬間がありました。恁さんがぽろんぽろんとギターを奏で、Hakuyaさんが優しくドラムを叩いて時間をそっと支えるもと、Regaさんがぽつぽつと思い出を語り始めます。

「俺と恁はもともと別のバンドだったんだけど」「恁から『Mr, Human Error』を聴かせてもらって」……あんまり記憶に自信がないのですが、Regaさんがこのバンドに触れたときのエピソードを語っていらっしゃいました。

そうして柳さんがふたたびステージに戻ってきたタイミングで「あとは頼んだ」と小さく肩を叩いてセンターへ送り出し、くるりと後ろを向いて汗を拭います。

柳さんが客席をみすえながら語るのは一年前の今、二年前の今、それからバンドを立ち上げた三年前の今。夢を追うことの大切さを説くメッセージへ、会場中が耳を傾けます。

「俺たちはこの曲から始まった」
最後の言葉が落ちたあと、すっ、と一呼吸を置いて告げられた曲名は『Answer』。音源化されていない初期の楽曲に、あちらこちらで小さな歓声があがります。

歌詞に散りばめられたバンドの軌跡を、聴き手にも惜しみなく手渡してくださるその姿勢に、またしても胸がぎゅっとします。旧体制のときからこの曲のベースラインがすごく好きだったのだけれど、Regaさんが弾くとこうなるんだなあ……と、感慨深くなりました。

そのあとは『barbarism』『炯眼、人を射る』と畳み掛け、この日のステージは終了。

しかし誰もその場から動こうとはせず、自然とアンコールが沸き起こりました。程なくして、どこかほっとしたような佇まいのメンバーさん達が、ふたたびステージに戻ってきます。

はじめはロングカーディガンを羽織っていた恁さんも、そのうちタンクトップになり、最後はもう上半身裸で吠えながらギターをかき鳴らしていました。とってもごきげんな恁さん。

アンコール

「アンコール何やる?本当に、今日はアンコールやるつもりなかったからさ、曲決めてないんだよね。何やる?何聴きたい?」

「ヒューマンエラー!」
会場からリクエストが飛ぶと、それを聞き間違えた柳さんが「やなな?」と自分のニックネームを答え、笑いを誘います。

「あ、ヒューマンエラーか!ヒューマンエラーは今日同期がないんだよなー。今日やった曲の中で」、そう返すとなりではRegaさんが「ちなみにこれが今日のセットリスト!」と、黒マジックで曲順の書かれた紙をかかげて見せます。

「ミラーミラー!」
「ミラーやる?じゃあミラーでいいけど、Hakuyaさん、ミラーいけますか?よし、じゃあ最後にもう一回それやって……今日終わろうぜ」

MIRROR MIRROR

MIRROR MIRROR

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
激しい拳にあわせてOiコールが湧き上がりました。はじめて公開された当時はどちらかといえば綺麗にまとまっていたノリが、ライブの回数を重ねるごとに、どんどん熱くなっているのを感じます。

アンコールのHakuyaさんのドラムが、もうもうもう、ものすごく格好よくって。熱くて、力強くて、聴き手の背中をいきおいよく押してくれる音なのです。だけど叩いている本人に苦しそうな様子はまったくなく、口をおおきく開けて笑いながら、楽しそうに演奏されるのですよね。

ああ、本当に楽しかった……泣いて、笑って、へとへとになるほど汗をかいて。Regaさんと恁さんがドラムセットのところに足をかけて後ろ向きに演奏するのも、柳さんが恁さんをステージ下に落とそうとするのも、それをかたくなにこらえる恁さんも、ぜんぶ楽しかった。今までのライブで今日がいちばん。

イントロが鳴るたび、柳さんが歌い出すたびに驚喜して、誰も彼も一緒になって拳を突き上げる景色が、どんなにまぶしかったことか……とにかく今日は最高の一日でした。

懐かしい曲の衰えぬきらめきに触れ、新しい曲へまたいっそう期待をつのらせて、もうもうもうこの日のことはずっと忘れません。 メンバーさんもプレイアーさん達も、本当にありがとうございました。

ブレメスだいすき!

物販

ちなみにちなみに、物販では『[blind Circus.]』を購入しました。ケースを開いた瞬間、おもわず「わあ、かっこいい!」と声が出てしまうセンスのよさ。

blind Circus.

blind Circus.

CDの円盤もジャケットと同じ瞳のデザインなのですが、まんなかの穴が開いている部分がちょうど瞳孔のように見えるのがたまりません。

ジャケット裏のアーティスト写真、フォント、歌詞カード裏のアートワークやラストページのメッセージ、や……柳さん!これをずっと待ってたの!と叫びたくなるような、あまりにも痛々しい歌詞。とにかくすべてが格好よく、何度も手にとって開きたくなる作品でした。

曲の格好良さは言わずもがな、もう今回はすべて好みのど真ん中なのです。これからいっぱい聴き込みます。じっくり聴き込みます。たのしみです!

セットリスト

1.slumber
2.蝋涙に死す。
3.MIRROR MIRROR
4.Freak Show
5.PERSONA
6.old【new】order
7.[blind Circus.]
8.VENOM
9.Answer
10.barbarism
11.炯眼、人を射る。
EN. MIRROR MIRROR

公演情報

BLESS THIS MESS 60分限定無料ワンマン「[blind Circus.]」
恵比寿 club aim

20180629/BLESS THIS MESS@池袋BLACK HOLE

はじめに

梅雨はいったいどこへ行ってしまったのでしょう?じりじりと容赦なく陽射しの降りそそぐなか、BLESS THIS MESSの出演するライブを観にいってきました。

連日の猛暑ですでに慢性熱中症ぎみのわたしにとっては、その道中こそベリーハードステージ。何度こころが折れそうになったかわかりません。民家のねこを片っ端から盗み、網走刑務所でダブルピース、そんなふだつきのワルでも、おてんとさまの前では無力なのです。

このままだと戒名が炎天下爆発四散大姉になっちゃう、とよろめきながら、それでもなんとか池袋ブラックホールにたどり着くことができました。熱が見せた幻覚じゃなければ、この日のブレメスはオール新曲、はじめて尽くしのセットリスト。

というわけで、筆圧つよめの感想です。

対バンの印象

トイサーカス

その名のとおり、サーカスをコンセプトにした華やかなバンドさんでした。ボーカルさんが歌っているうしろで、楽器隊のみなさんが動物のぬいぐるみやお人形をつかった舞台風の演出をされます。

最前列の柵からフロアを眺めるようにぬいぐるみのキリンさんが置かれたときには、あまりのシュールさにおもわず笑ってしまいました。

曲と曲のあいだにはかならずMCがあって、メンバーさんたちの掛け合いでおもしろおかしく盛り上げていきます。ポップな印象なのだけれど、ベースさんが上半身裸で激しく頭をふりながら演奏したり、拳ヘドバンやモッシュタイムがあったりと、攻撃的なギャップもありました。

ブレメス本編

1.MIRROR MIRROR

youtu.be バンドネームを唱えるSEが流れるなか、まずは立石 恁さん(Gt.)とサポートドラムのHakuyaさん、Regaさん(Ba.)が登場。それから少し間を置いて、柳さん(Vo.)が現れます。

メンバーコールが途絶えて一瞬の沈黙が下りたあと、ドラムの音と共にステージが始まりました。この日のオープニングを飾ったのはすっかりおなじみの『MIRROR MIRROR』、スピード感抜群のメロディに一曲目からトップギアで行かずにはいられません。

MIRROR MIRROR

MIRROR MIRROR

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250

2. 蝋涙に死す。

『蝋涙に死す。』はゆっくりと余韻の尾を残すようなヘッドバンギングで始まりました。なんだか足元がぐにゃりとゆがむような奇妙さが感じられ、癖になる曲です。楽器がチャカポコチャカポコ鳴っていて、ちょっと異国の雰囲気もするかな?

蝋涙に死す。

蝋涙に死す。

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
試聴の段階からライブ映えしそうな印象を持っていたのですが、その期待にたがわぬ格好良さでした。

特に、柳さんのシャウトの後ろでドラムがドコドコドコドコ……と鳴ってからの、ダッダッ!ダッダッ!「裁きをくれ」ダッダッ!ダッダッ!「あなたのーおー」とサビで一気に音の粒が弾ける流れは、実際に生で聴くと最高です。とってもとっても楽しい……。

『old 【new】order』がそうだったように、これから回数を重ねる中でどんどん化けそう。たくさん聴けたらいいなあ。

それから下手のRegaさんは、黒いノースリーブの衣装から伸びる腕を自在にあやつって、ラッパーめいたステージングをしていました。柳さんの歌声に合わせて唇をうごかし、片手を胸元に這わせたり、かと思えばその手をフロアへ突き出したり。

なかなか歌詞を聞き取る余裕がなく、なんと言っているのかまではわからなかったのですが、何ごとかを訴えようとするその熱量から目を離せませんでした。それがまたモードストリート系の衣装とよく合うのですよね。

バンドのなかで唯一、ちょっとカジュアルに寄せてるあの抜け感がすごく好きです。全体を引きで見たときのバランスにいつもぐっと来ます。

3.[blind Circus.]

blind Circus.

blind Circus.

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
続く『[blind Circus.]』は、どこか懐かしさをおぼえる曲調と柳さんのすこし抑えぎみに歌いはじめる声が絶妙にマッチしていて、火照ったからだがほどよくクールダウンされました。 スポット動画をはじめて視聴したときは、こんな感想を抱いていたみたい。なんとなく、90年代後半のふんいきを感じるのですよね。終末へ向かう閉塞感があって、でもその中に「日本の未来はWOWx4」って希望を見いだそうとするような。

全体的に綺麗で繊細なかんじの曲を予想していたのだけれど、イントロと間奏はおなかの底にずんっと響くメロディで、ものすごく格好良かったです。Aメロもただ美しいとか切ないというよりは、力強さを内包する大人の色っぽやなぎさんな感じでした。ぐっと来ます。

そんな柳さんが低音ボーカルを響かせるなか、恁さんもまた上手のスタンドマイクに唇を寄せてスモーキーな声を重ねます。恁さんのコーラス!コーラスの恁さん!Regaさんはいつぞやに聴けた気がするのだけれど、恁さんははじめて。もうもうもう本当に、飛び跳ねたくなるほどうれしくって。

先月の高田馬場エリアではじめて『MIRROR MIRROR』を聴いたとき、その迫りくるバンドサウンドの合間に、なんだか恁さんとRegaさんも歌い出しそう……と感じていたんです。いま思えば、それはたしかな願望からくる想いだったのかもしれません。この日しっかり堪能できたことが本当に幸せでした。

コーラスのあるバンドさんはとってもとってもとってもかっこいいと思います。

4.VENOM

VENOM

VENOM

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
この日のラストを飾る『VENOM』は、ひたすらハードなロックチューンでした。イントロから柳さんが「頭振れ!!」と煽り、そのあとは逆ダイ・折りたたみ・高速ヘドバンと、体力をすべて振り絞るようなアクションが続きます。

万年三等兵のわたしはすっかり息を切らしてしまい、もう何が起きているのかわかりませんでした。「なあに?わかんない!わかんない!」「あたま?あたま?こぶし?」リスナーさんと口の動きだけで会話をしながら、なんとか必死に曲に食らいつこうとするばかり。

当然、柳さんのステージングをじっくり観る余裕もなし、黒いパンツの太もも部分にジッパーが付いていることしか覚えていなくって。処理能力が追いつかないせいでレスポンスができないというのは、自分のなかでちょっと悔しいところでもありました。

「曲に合わせてかならずノるべき」ということではまったくなくて、投げられたメッセージに対して受け身になってしまうのが、歯がゆかったのです。でも、今日の時点では「何が起きているのかわからなかった」がいちばん素直な反応なのかな。

すっきりしないところもあり、もうずーっと、あの『VENOM』はなんだったんだろう?と考えてしまいます。もしかしたらそれこそがバンドさん側の思惑で、わたしは踊らされているのかもしれません。

そんな感情はさておき、曲は終盤へ向かうにつれて混沌を極め、リスナーさんたちは良い意味で好き勝手に暴れていきます。視界のふちをかすめる拳ヘドバンと、曲間に放たれる「や゛な゛ぎィ!!」とシャウト気味のメンバーコール。うう、かっこいい、しびれちゃう。わたしもすっかり刺激され、名誉の二階級特進をいただくつもりで最後のちからを使い果たしました。

「BLESS THIS MESSでした、ありがとうございました」
言葉少なに告げた柳さんがそうそうにステージを去り、他のメンバーさんたちも続々とその後に続きます。最後に恁さんがトン、と胸の高さで両手を合わせるお辞儀をしてから下手へ捌けると、そのタイミングで幕が引かれました。

個人的に今日はやっとHakuyaさんのネームコールもできてうれしかった〜!のです。メンバーさん、プレイアーのみなさん、すてきな時間をありがとうございました。 次はいよいよ7月3日の無料ワンマン、とっても楽しみです。

セットリスト

  1. MIRROR MIRROR
  2. 蝋涙に死す。
  3. [blind Circus.]
  4. VENOM

公演情報

Cure V-splash Presents「V-SPLITS Vol.17」
BLESS THIS MESS / 君は鋭く。 / DIVEIN / KRAD / トイサーカス / 他

20180605/BLESS THIS MESS@高田馬場AREA

はじめに

BLESS THIS MESSのツーステージ、後半戦。池袋RUIDO K3を出たあと、次の舞台がある高田馬場AREAへと向かいました。

K3の攻撃的なライブとはまた違い、エリアはもう開演から閉幕まで、どこをどう切り取ってもクライマックス。あまりにもレアすぎるパフォーマンスを体験して、文字どおり狂喜乱舞なのでした。

そう、体育の授業では「生涯戦力外名誉選手」のタイトルをひとりじめしてきたわたしでも、ブレメスのおかげで「真上に飛ぶ」「横に揺れる」「グーパンチを突き上げる」能力が、めきめきと高まってきています。これはもう……あつい静止をふりきっての球界進出、待ったなし、やもしれません……。

というわけで、またまた筆圧つよめの感想です。

対バンの印象

マーブル

youtu.be とってもひさしぶりに拝見したのですが、コンセプトやストーリー性などのシアトリカルな要素で魅せていく演者さんでした。壇上から演説をとなえるようなMCだったり、『ピグマリオンスピーチ』ではお客さんたちが一糸乱れぬうごきで敬礼めいた振りつけをしたりと、世界観ができあがっていてすごかったです。

電気茶道部

youtu.be ヴィジュアル系初!の茶道部だそうです。ボーカルの山田さんは、今はなき池袋のライブハウス「鈴ん小屋」さんのアコースティックイベントでお見かけしたことがあるのですが、ユニットだとまったく印象が違っていて、びっくり。バンドの設定を事前に知っておいた方がもっとたのしめそう。

ジグラット

youtu.be 二度目ましてのジグラットさん。どこまでも鬱々としたメロディーに巻き舌気味のボーカル、なんだかとっても懐かしい雰囲気があります。ドラムの機材トラブルが起きたときにボーカルさんがぽつぽつと言葉を紡いでいらっしゃったのですが、湿り気を帯びた空気感がまた良い味になっていました。転換中にながれていた曲がとっても格好よかった。

ブレメスの印象

SE

youtu.be トリをつとめるBLESS THIS MESSのSEが流れ、バンドロゴの入った黒地のドロップアウトがステージの奥に姿をあらわします。いよいよ開演です。

この日は事前に立石 恁さん(Gt.)のほうから「せっかくのツーステージなので、当日の装いは2way仕様でいきます」と告知がありました。アイメイクが変わるのかしら、それとも衣装が変わるのかしら、とぼんやり想像をめぐらせていたその矢先、下手の舞台袖からふらりと伸びるギタリストの人影。瞬間、悲鳴ともつかない歓声がフロアを揺らしました。

コールを一身に浴びるのは、いつもは下ろしている前髪をオールバック風に編み込んだ恁さん。そのあまりの華やかさに「じんじんじんじーん!!」「カッコイイー!!」と驚喜の声が鳴りやまないのだけれど、とうの本人はどこ吹く風、足を大きく開いて黙々とギターを構えるのです。この佇まいもまた魅力だとおもいます。

序盤

どよめきがおさまらない中、この日のバンドは哀切なバラードソング『Lunar Regret』から始まりました。

Lunar Regret

Lunar Regret

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
今にも壊れてしまいそうなもの悲しいピアノの音色の上で、スカルメイクでばっちりキメた柳さん(Vo.)が、艶のある低音を落とします。最初は儚く、演奏がすすむにつれて情感ゆたかに歌い上げる圧倒的な存在感に、会場はじっと聞き入りました。

もちろん歌だけではなく、演奏もすばらしいのです。楽器がどうとか音色がどうとか専門的なことはまったく分からないのですが、とにかくこのステージでは、表現者としての力に魅せられっぱなしの時間でした。

たとえば「帰れなくなってもいい、体力全部ステージに置いてきます」と語っていたRegaさんの、初期衝動を全身全霊でステージにぶつけるアグレッシブなベース。恁さんがのけぞるように髪を振り乱したときの、しなやかに半弧を描く真っ赤な毛先。それらひとつひとつが、緊張感と衝撃をもって何度も何度も心にせまってきます。

とりわけ、ギターソロからの流れは圧巻です。大きく脚を開いてかなり低めにギターを構えるすがたには、神々しいほどの色気があふれています。「ギターからぴょこんと生えている銀の棒(お名前がわからない)」で小刻みに弦を搔きならし、ためこんだ感情を切り裂くような歪みの音色を、これでもかと叩き込むその……もう言葉にならないのですけれど、とにかく最高の演奏。最高の音。最高のメロディー。

そのうえ終盤ではさっきまで本能のままに暴れまわっていたRegaさんが、その場に崩れ落ちるかのように両膝を床につき、放心した表情を浮かべるのです。あまりにもその一瞬がすごすぎて……、ブレメスのベーシストとかバンドマンのRegaさんとか、そういう枠組みをすべて超えて心を打たれました。

そしてそんなふたりの中央に立つ、柳さんの歌声。『Lunar Regret』はこの日はじめて生で聴けたのだけれど、CDやMVをはるかに上回る説得力に鳥肌がとまりませんでした。アナログな手ざわりの熱は、これぞブレメスの真髄、と言い切ってしまいたいくらい。本当に本当に、すごかった。ああ、またどこかのステージでじっくりバラードを聴きたいなあ。ブレメスを知らないお客さんたちにも聴いてほしいなあ。

こうした三人が、同じステージのうえで同じ時間に交錯していることがおそろしく、なにか群像劇のワンシーンを観ている心地にすらなりました。全編クライマックスのようなライブのなかでも、とくに忘れられない場面です。

中盤

感無量でみまもるオーディエンスの前に、今度はおなじみの定番曲『old【new】order』が響きます。足元一面に青いひかりの宇宙が広がっていくような開放感が、とってもきもちいい。

Old (New) Order

Old (New) Order

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
きらきらした音の粒が降りそそぐなか、恁さんとRegaさんは跳ねるようなステップを踏んでいます。そのまんなかに立つ柳さんは両手をおおきく広げて片足でリズムをきざみ、リスナーさんたちは「もう一度!」と人差し指を高くつきあげる。だけど、今日と同じ瞬間はもう二度とめぐって来ない……なんて眩しくて、しあわせな光景なんでしょう。

やがてMCの時間がとられます。昼間の池袋RUIDO K3はどこか敵陣に乗り込むような雰囲気でしたが、エリアはなんだか実家のような安心感。マイクを握る柳さんはそうそうに告知を切り上げ「そんな事より、恁くんのこの新しい髪型どうよ?ちょっとこれは敢えて触れていくけど、どうなの?この恁くん!」と、しかしいつもどおりマイペースによそを向いている恁さんを、手のひらで指し示します。

オーディエンスがメロイックサインや拳を突きあげてそれに応えると「さっき楽屋で初めて見たんだけど、まさかこんな風になってるなんて知らなかった」と裏話がなされ、なごやかな笑いが起きました。

終盤

MIRROR MIRROR

MIRROR MIRROR

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
それからバンドは新曲『MIRROR MIRROR』を届けます。これまではなかなか曲のきっかけをつかめなかったのだけれど、MVでしっかり予習できた今回は、きもちよく音の波をつかまえることができました。聴けば聴くほど好きになる曲だとしみじみ。

耳に間違いがなければ「Under myself……」と聴こえるパートでは、オーディエンスが一斉にからだを折りたたみます。重く粘り気のあるグルーヴ、地の底から迫りくるベースの音圧、煽情的な鋭いシャウト。もうもうもう、格好いいなあ。どうしてこんなに格好いいんだろう?

ずっしりと骨太なのだけれど泥臭くは転ばず、むしろどこか洒落たクールな温度感がたまりません。柳さんと恁さんとRegaさん、そしてステージのサポートをつとめるHakuyaさん(Dr.)だからこそ描き出せる高純度な高揚感に、からだの熱は増すばかり。

そして何より「キミの夢さえ僕が笑おう」、ギターソロ明けのこの力強いメッセージは何度聴いても胸が苦しくなります。聴き手の領域までぐっと踏み込んで「自分が音楽で何をもたらすのか」伝えてくださっているような、そんな心地がするのです。

新章ブレメスを象徴するような疾走感を保ったまま、最後はのこりの体力を完全に絞りきる『barbarism』でいっきに畳み掛けます。曲終わりで後ろ向きにジャンプした柳さんがそのままステージに倒れ込むと、その拍子にスマイル全開なHakuyaさんがドラムの奥から顔をのぞかせ、最後は一斉にキメのジャンプ。長い長い一日に、ようやく幕が降りました。

ツーステージをふりかえってみると、初期の楽曲から最近の楽曲をひとつひとつ辿っていくような、今回のセットリスト。過去ごと包み込み、ファンと共にこれからを歩むバンドの現在形が映し出されていて、なんだかじーんときちゃいました。エリアのブレメスだいすき。ブレメスのエリアだいすき。

メンバーさんもファンのみなさんも、ありがとうございました!

セットリスト

  1. Lunar Regret
  2. old【new】order
  3. MIRROR MIRROR
  4. barbarism

公演情報

Takadanobaba AREA presents~AREA 21st Anniversary~
BLESS THIS MESS / リジェーヌ / 電気茶道部 / マーブル / ジグラット / ALA-EVE / NECLOS

20180605/BLESS THIS MESS@池袋RUIDO K3

はじめに

ちょこちょことライブへおじゃまするようになってから、なんだか肩周りがしっかりしてきたような気がします。もしかしてもしかすると、今なら球速140キロくらい出せてしまうかもしれない。スポーツテストのボール投げはいつも飛距離2メートルを越えなかったけれど、パワーアップした今のわたしなら……。

というわけで、またまたBLESS THIS MESSの出演するライブへ行ってきました。この日はブレメスにとって初の試みとなった、昼夜ツーステージ。まったく異なるイベントへの出演だったのですが、なんだか二部構成のような、とっても贅沢なステージでした。

まずは池袋RUIDO K3の感想です。

対バンの印象

DAV

youtu.be 道化師めいた笑顔の覆面を使ったシアトリカルな演出で、フロアは何度となく「あはははは!ヤバい、ウケる!」とにぎやかな声があふれていました。だけどそうして笑うオーディエンスを笑っているような……なにか、静かな毒気をたたえている演者さんに感じられて、ちょっとドキッとしてしまいました。「見る側」と「見られる側」の一方的な関係性が通用しないというか。二曲のみの演奏を終えるとそうそうにステージを退出していて、フロアには「もう終わり?もう終わり?」と余韻だけが残っていました。

Ronovell

youtu.be 二度目ましてのバンドさん。黒いフードを目深に被った装いだったので最初はお顔が分からなかったのですが、ボーカルさんがハイトーンの咆哮をあげた瞬間、ああっ、ドラムの方が骨折していたところの……!と気づきました。エリアでご一緒したファンの方がとっても感じの良いおねえさんで、応援する姿勢が素敵だったのですよね。それで、最前列へおじゃましちゃった。お腹にずしんと来るのにメロディーが綺麗な一曲目が、すごく格好良かったです。

最後のXOXOを君と

youtu.beパリピ系バンド」がコンセプトとのことで、ハンドクラップや扇子で踊れるポップなパーティーチューンが印象的でした。ただそれよりも、ベースさん失踪の衝撃がつよくって。機材や衣装がたりない状態でステージに上がる気持ちをおもうと、言葉がなくなっちゃいますね。頑張ってくださいと声をかけるのは無責任かもしれないけれど、応援したくなるバンドさんでした。

ブレメスの感想

序盤

youtu.be バンドネームを唱えるSEが流れるなか、サポートをつとめるHakuyaさん(Dr.)、立石 恁さん(Gt.)、Regaさん(Ba.)、柳さん(Vo.)が続々とステージへ足を踏み入れます。前置きはいらないとばかりに各々が楽器を構えると、攻撃的な『barbarism』がスタート。最前列との間をしきる柵に演者みずから足をかけ、限界までフロアに身を乗り出して熱いプレイを繰り出しました。

この日は2番手とかなり早い出番ながら、なにか「全員で首を取りに行くぞ」と挑戦状を叩き付けるような熱量がたっぷり。ほとばしるエネルギーを受けると、オーディエンスもまた全力のレスポンスを返します。ライブはのっけから、想像以上の熱気です。

「ブレメスです!よろしくお願いします!」そう告げて存在を示したかと思えば、咆哮にも似た声で「頭!!」「いいぞ!やれやれ!!」と煽る柳さん。

このライブはいつもの二割増しで攻撃的なスタイルだったのですが、普段のステージを思い返してみても、柳さんのマイクパフォーマンスはどんどん変わっていっていると感じます。こちらが欲しいタイミングで「俺に合わせて!」「折りたため!」とフロアを誘い込んだり、声のトーンを落として寄り添うように語り掛けたり。ステージとフロアの境目がわからなくなるほど一体感を味わえるのがうれしいです。

中盤

続けてバンドが叩き込んだのは、俗世間へのアンチテーゼを謳った『Mr, Human Error』。長らくセットリストに入って来なかった初期の楽曲にわっと歓声が上がります。わたしに関してはほとんど一年ぶりだったので、思わず「わあ、なつかしい!」とこころの声が口をついて出てしまいました。また、メンバーチェンジ後の演奏を聴くのもこの日が初めてだったのです。

「愛想笑いばかり覚えた、感情のないニュースキャスター」皮肉めいた歌声のその後ろでは、いつの間にか歩み寄ったRegaさんと恁さんが至近距離で向き合って、「ニュースキャスター!」と指をさしあいます。うーん、とってもすてき!あの演出はどなたのアイデアなんだろう?寸劇とまではいかないけれど最近のブレメスは大人の遊び心が満載で、おもわずメロイックサインを返してしまいました。

しっかりとフレーズを押さえながらも、ステージングの自由度は加速を増すばかり。ときにはベースを頭上に大きく掲げ、フロアに背中を向けて踊り、マイクコードをくるくると弄び、一秒たりとも目の離せない展開にどんどん引き込まれていきました。面白いのは、恁さんとRegaさんが上手と下手でパフォーマンスをしていると、柳さんも格好良くみえるのですよね。その反対もしかりで、それぞれの個性がお互いの魅力を高めあっているようにかんじました。

そしてそして、曲の後半にあるギターソロ。軽快ながらどこか郷愁のただよう音色が、これでもかと胸に迫ってきます。収録アルバムの『Hymn』で聴く音色とはまったく違う魅力があって、ああ恁さんが弦を爪弾くと『Mr, Human Error』はこうなるんだ……と、人知れず胸を打ちふるわせた瞬間でした。大好きなパート、大好きな音です。

終盤

「ブレス・ディス・メスです!こんにちは、ブレメスです!」

柳さんのMCに入り、ようやくメンバーさんたちのルックスをしっかり見る余裕が生まれました。すごい!もう、もう本当に……本当に、回を重ねるごとにどんどんブラッシュアップされていっています。

とくにRegaさんがかなり体を絞っているのには、びっくりしました。一週間前のホリデー新宿のときにもそのヴィジュアルの変化に驚いたけれど、またさらに磨きがかかっていて。柳さんはティム・バートン監督の作品に出てきそうなリップメイクがもっと素敵になっているし、恁さんは、恁さんはツーステージ目で開幕そうそう地球破壊爆弾を放って、高田馬場を焼け野原にしていたし。

わたしは「ブレメスさんは甘口・中辛・辛口とそろっていますね」と何ひとつうまくない感想を二度にわたって公式へ送り付けたことのある前科持ちなのですけれど、やっぱりここでも、バンドとしてのバランスの良さを語らずにはいられません。四時間ほどルイードに滞在したあいだに、もう何度メンバーさんたちへの「ヤバい、かっこよすぎる」「全員かっこよすぎて選べない」を聞いたかわからないもの。ちょっと、今までに感じたことのない空気感でした。

そんな狂騒のラストを飾ったのは『16』です。これもまた初期の楽曲で、一気に加速する曲調にリスナーさんたちは大盛り上がり。ざくざく刻むような凶暴なベースとドラム、そこに乗っかる妖しげなギター、もうとってもとってもきもちいい。

興奮をおさえきえないフロアに向かって柳さんが「16を数える前に、16の罪を懺悔しろ!」と挑発的に歌うと、続けざま「死んでみろ!」と畳みかけます。それをきっかけに超高速のヘッドバンギングが巻き起こり、ボルテージは最高潮。むせかえるような熱気を残して、ステージの幕が下りました。

セットリストは3曲と少なめですが、それをはるかに上回る満足感。披露された全曲がファーストミニアルバムの収録曲で、とっても贅沢な時間を過ごすことができました。 レーベルメイトのUNDER FALL JUSTICEさんとScarlet Valseさんを拝見できなかったのはちょっぴり残念だったけれど、ブレメスを応援するべく、高田馬場AREAへ向かったのでした。

セットリスト

1.barbarism
2.Mr, Human Error
3.16

Starwave Records Vol.6 [DVD]

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公演情報

[Dark Ambition Exposed vol.77 〜Scarlet Valse Raizo birthday Special〜]
SAVAGE(ゲスト) / Scarlet Valse / UNDER FALL JUSTICE / KRAD / 最後のXOXOを君と / Ronovell / ℃ellsius / CRISIS / DAV / BLESS THIS MESS

20180529/BLESS THIS MESS@HOLIDAY SHINJUKU

はじめに

BLESS THIS MESSのステージを観るべく、新宿は歌舞伎町のライブハウス「HOLIDAY SHINJUKU」へおじゃましてきました。この日の前日にあたる5月28日は、ブレメス結成3周年のお誕生日。それと同時に、立ち上げメンバーの脱退から、まる1年が経った日でもあります。

解散や脱退はバンドに付き物だとわかっているけれど、終わりをむかえるときはやっぱり悲しい。柳さん(Vo.)と蘭丸さん(Gt.)と駁さん(Ba.)の三人組で成り立っていたブレメスが、なんらかの事情で柳さんひとりの活動になったときも、なるべくいたずらに暇を作らないようにしていました。

だけど今となっては、メンバーさん自身の手で脱退の選択を下してもらえた優しさを、ひしひしと感じるばかりです。去年からアヴィーチーやリンキンのチェスターをかなしい形で失って、なおのことそう感じます。それに、誰かとの別れが寂しくなる人生は、寂しくないなとも思えました。

その上で今のブレメスが織りなす音楽が大好きで、とことん寂しくなってやるぞという気持ちなのです。BLESS THIS MESS、3周年おめでとうございます。新章ブレメス、いつもありがとうございます。

というわけで、ライブの感想です。

対バンの印象

Sclaim

youtu.be この日の前バンドは、名古屋・東京ツーデイズ敢行中のSclaim(スクレイム)。
去年の秋に「LUNA SEA限定Session Night@目黒 LIVE STATION」でいちど拝見しているバンドさんです。 youtu.be 当時はルナシーを意識したダークな衣装だったけれど、この日はあたまからつま先までとってもカラフル。極彩色がステージにそろった瞬間、黄色い歓声がわっと湧きあがっていました。

「スクレイムはやばいよ。素人が安易に手を出すと、眩しすぎて死ぬよ」
ファンの方からそうお聞きしていたのですが、これには深くうなずくばかり。ボーカルさんの透き通った歌声とメロディアスな演奏、フロアを彩るフラッシュリングの海。あまりのきらびやかさに何度も「おろろ」と痙攣しながら、東尋坊へ行きかけました。ちょっと刺激がつよかったみたい。

なんて言いながらも右へ左へのモッシュにすっかり感化され、見よう見まねで飛びはねると、これがとってもたのしいのです。たしか、二曲目に披露された『Celestial Sphere』だったかな?宇宙をただよう雰囲気を堪能させていただきました。

ブレメス本編

序盤

youtu.be ふっと会場が暗転し、布のすべる音をのこして黒幕が引かれます。オープニングSEと共にサポートを務めるHakuyaさん(Dr.)があらわれ、立石 恁さん(Gt.)とRegaさん(Ba.)が入場。その最後に口裂け男めいたメイクの柳さん(Vo.)がゆっくりと歩いてきました。

「やなぎやなぎやなぎー!!」
「じんじんじんじんー!!」
「れがれがれがれがー!!」

メンバーそれぞれの名前を呼ぶ歓声にむかえられるなか、しかし誰ひとり笑顔を浮かべることはなく、うつむきがちに楽器を構えます。そうして柳さんが真横いっぱいに裂けた口を開くと同時、新曲『MIRROR MIRROR』がスタート。

MIRROR MIRROR

MIRROR MIRROR

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
わたしはまだこの曲のきっかけを掴めておらず、最初はおろおろ。だけれど最初の英語シャウトでリスナーさんたちが一斉に逆ダイをする瞬間、音のうずに飛び込めるのですよね。

そこからあとはもう、駆ける旋律に振り落とされないよう全身で追いかけて、こぶしを突き上げるばかり。心臓がどきどきして息苦しいのに不思議と笑みのこぼれる、その流れがもう本当にたのしくって。

躍動的な演奏と目まぐるしく展開するメロディー、ときどき視界の縁をかすめるリスナーさんたちの笑顔。そのすべてが心地よく、ずっと頬がゆるみっぱなしになってしまいます。

モヒカン頭にトゲ付き肩パッドで火炎放射器、そんな自分でもニコニコほがらか笑顔になれるので、音楽のちからはすごいです。

そうそう、二番のどこかにとっても没入感の高いメロディーがありました。ドラマチックと言えばよいのか、なにか無性に泣きそうになって……すこし下を向いてしまったり。一体どこに反応したのかはわからず、記憶を手繰り寄せようとしても、なんにも思い出せません。ただただ心を引っかかれたような余韻だけが、胸にのこっています。

ああ、やっぱりはやく、フルバージョンのMVを観たいなあ。しっかり聴きこんでライブにのぞめたら、もっとたのしいもの。

中盤

前回の「新章ブレメス」おひろめ以降、ステージングの熱量がいっきに増したと感じています。

この日の恁さんは寡黙な佇まいながらも、喜怒哀楽のすべてを指先に預けるかのようなギタープレイを叩き付けていました。それとは対照的にベースのRegaさんはオーディエンスに向かって吠え、ステージの前方ぎりぎりにしゃがみこんで弦をかき鳴らす一幕も。

かと思えば、曲間のMCでは柳さんが声のトーンを落とし、「今日はじめて観るひとたちも、いつも来てくれるひとたちも、ありがとう」とフロアの顔に視線を点々と置きながら語り掛けます。その緩急の差に、目も耳も離すことができませんでした。

個人的には「ブレス・ディス・メスです!」とバンドネームがはっきり聞き取れるのも、うれしい瞬間です。

7月3日の無料ワンマンの告知を簡潔にはなした柳さんは、「ワンマンまであと二回しかないんだよ。だから今日、最高にかっこいいバンドでいないとさ」と言い放ちます。それからバンドは、アルバム『XIALL RAIN』の収録曲『old 【new】order』をプレイ。

Old (New) Order

Old (New) Order

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
開放感あふれるシンセサウンドと生音に合わせて、伸びやかな歌声がひびきました。

終盤

ラストは『barbarism』へとなだれ込み、「俺に合わせて!」の煽動をきっかけに、無数の拳が突き上がります。ここ最近は『醜滅醜焉』が最後にくることが多かったので、とってもびっくり。ひさしぶりに生で聴くと、無駄を削ぎ落としたシンプルな格好良さにしびれてしまいますね。とくにイントロの……こう……デッ!デッ!デッ!ヅングヅクヅグ!うーん、うまく例えられないけれど、野性味あふれる音がたまりません。

かたやRegaさんは大粒の汗を散らして暴れ倒していたかと思うと、とつぜん下手のステージ前方ぎりぎりにあるモニター?へ横向きに腰かけ、演奏を中断。肩でおおきく息をつくやいなや「あついー……」と唇を動かしているのが印象的でした。

そして何より最近は、回を重ねるごとに増す加速度にびっくりします。本当に!それはヘアメイクの変化ひとつとっても、ぜんぜん違うのですよね。とくに今回は照明の強い光に負けない濃い目のお化粧になっていて、オープニングではその舞台映えぶりに「あっ」と、ちいさく声を上げてしまいました。

とっても、とっても、たのしかった。無料ワンマンへの期待値が否応なしに高まって、この日のステージは幕を閉じました。

セットリスト

1.MIRROR MIRROR
2.Freak Show
3.old 【new】order
4.barbarism

公演情報

2018/05/29 (火) @HOLIDAY SHINJUKU [Dark Ambition Exposed vol.76]
Starwave Records presents
OPEN / START
OPEN 15:00 / START 15:30 前売 3,500円 / 当日4,000円 (※D代別)
CAST
BLESS THIS MESS / 怪人二十面奏(ゲスト) / FIXER / Scarlet Valse / DIEALO / SIRENE / Sclaim /glamscure