BLESS THIS MESS 1st EP『[blind Circus.]』感想
- アーティスト: BLESS THIS MESS
- 出版社/メーカー: Starwave Records
- 発売日: 2018/07/04
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ブレメス新譜の印象
最高!
もうもうもう、その一言に尽きます。
2017年12月20日にリリースされた前作『XIALL RAIN』の収録曲『PERSONA』をはじめて聴いたときのときめきが、それを上回るかたちで押し寄せてきました。
作曲は今回も、柳さん(Vo.)と立石 恁さん(Gt.)。『PERSONA』の作曲者である恁さんの曲は、クラブミュージックっぽい要素を取り入れたお洒落な雰囲気です。
そこに柳さんのキャッチーな歌メロや、意味性と語感のからみあう歌詞、深みのある低音ボーカルが乗ると、たちまち「BLESS THIS MESS」ってジャンルになる気がします。どこのバンドとも例えるのが難しいそのオリジナルな曲調に、すっかり魅了されてしまいました。
1.蝋涙に死す。
はじめてイントロを聴いたとき「まさかブレメスでこんな曲が聴けるなんて!」と一瞬でこころを奪われた曲。ただひたすらに格好いい〜!です。今までのブレメスにはまったくなかった新鮮な曲、なのだけれど随所に感じる柳さんのテイスト。ラップパートではついつい「イライライライラ〜♪」といっしょに口ずさんでしまいます。
もう胸は痛まない
振り出しに戻らない
目を閉じ見ないフリなんてできないや
この力強いフレーズが大好きです。柳さん自身の言葉なのだろうけれど、自分を勇気づけるおまじないにもなるのですよね。
曲はお洒落なミドルテンポですすみ、焦らして焦らしてとことん焦らして、やっとラストでサビが来ます。そのもどかしさが、とてもとてもとても好きです。
蝋燭が泣いている 死せる灯火に
自分を重ねて 重ねて 重ねて
死を待つよ……
ラストではこの「死を待つよ」がずーーっと繰り返されるのですよね。わたしは「死を待つ」という行為がイコール前向きな、自発的な姿勢と結びつかなかったから、はじめはちょっと違和感がありました。
そしたら、それは「(何も行動を起こさずにただ漠然とその場に立って)死を待つよ」なのだと、頭から信じきっていたことに気づいたのですよね。
だんだんと高さの減ってゆく蝋燭に自分の余生を重ねて、投げやりになっているのかな?って、単語のイメージだけですっかり思い込んでいたみたい。
歌詞が肌になじんできたいまでは、「死を待つよ」は、「いつかは必ず死が訪れる、その結末は抗わずに受け入れる。そのうえで今を生きるよ」ってメッセージとして、受け取るようになりました。そうしたらますます、この曲が好きになったのです。
2.MIRROR MIRROR
通称ミラミラ、新章ブレメスの名刺!ライブではじめてフルを聴いたときは、あのスピード感に全くついていけなくてすごく振り回されたのを覚えています。とりわけ曲の始まり方がなかなか覚えられなくて、いつも気付いたときにはBメロ辺りまで進んでいたのですよね。
だからいつも「な、何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった……」ってJOJOのポルナレフ状態だったのをおぼえています。
でもMVのフルバージョンが公開されてしっかり曲の展開をおぼえたあとだと、今度はイントロのデデッデデデデデーンデン!のときに「もしかしてミラミラですかァァーーッ!?」と心のスタンドが喜びはじめたのです。最後まで保たれつづけるスピード感が、逆に心地よくてたまらなくなりました。
この曲がセットリストに入っている日のライブは、わくわくが止まりません。最初からトップギアで走り出す音色を追いかけていると、いつも笑顔になれます。
そして何より「約束を今しよう。キミの夢さえ僕が笑おう」、ギターソロ明けのこの力強いメッセージは何度聴いても胸が締めつけられます。ステージ上から聴き手の領域までぐっと踏み込んで「自分が音楽で何をもたらすのか」伝えてくださっているような、そんな心地がするのです。
終盤のこの歌詞が大好き。はっきりと言い切ってくださるところに、柳さんがフロントマンとして歌を届け続けようとする「覚悟や勇気」を感じられて、とっても感激しました。
3.[blind Circus.]
スポットとフルでいちばん印象の変わった曲。化粧品のコマーシャルに使用されそうな華やかでまばゆい曲だと思っていたら、まったくそんなことはなく、柳さんは口から毒霧を噴射していました。某月某日で 存在本能停止した
可愛いなんてもう呆れちゃうな
のっけからこんな歌詞に始まり……
I don't know what to do.
go fuck yourself.
(泡をふいて倒れる音)
あなたが持つ価値観に苛々を
砂で固めた言葉を 水で薄める事できない
と、と、とってもかっこいい〜!!
毒やなぎさん……と、と、とてもよいです。
はじめて歌詞を知ったとき、なんだかもうするどい刃物で胸を斜めにかっ割かれた心地がして、とにかく衝撃的でした。
この曲は歌詞のなかで「あなた」と「キミ」へ宛てるフレーズがあります。
「キミ」と「あなた」の使い分けはどういう基準でされているのかな。
どちらも不特定多数に向けて呼びかけているように感じたのだけれど、なにか思うところがあるときは「あなた」とちょっと距離のある呼び方をして、わざと突き放しているのかな?
ともかくともかく、終盤のここがいっとう好きです。
盲目のこのサマ 僕をこのまま 受け入れたの?
目の前で立ち尽くすキミに幸せあれ
「目の前で立ち尽くすキミに幸せあれ」って、メロも言葉のひびきも最高ですね。ついつい口ずさみたくなっちゃう。
曲調に関しては縦ノリなところがあったり、ライブだと恁さんのコーラスがあったり、アルバムのなかでも特別お気に入り。最初の英詞あとに来る音は、あまりの色っぽさに胸がぎゅっとなります。「I don't know what to do. go fuck yourself.(ジャーン!!)」
それから間奏の「プルルップルルッ」「わっちゅっちゅー」と鳴ってるワブルベースもたまりません。
ワブルベース……そんなお名前なんですね。みんな知っている言葉なのかな?もしや。わたしはずっと「カレーパンに取っ手が生えたみたいな形のまんまる光線銃で、よわい宇宙人を撃つときの音」って説明していたのだけれど、どなたにも、まったく、ぜんぜん、伝わらなくって。
新木場へよく踊りに行く女の子に「カレーパンのまんまる光線銃の〜」と質問していたときも、「次言ったらこれやぞ」って目の前にグーパンチを突き出されたのです。これからは物知り顔でワブルベースとかダブステップって言ってみよう。
4.Lost Sphear
アルバムのなかでひとつだけ異質な雰囲気のある不思議な曲。前曲の『blind Circus.』からとつぜん音数が減って、ひろい空間へぽいっと放り出された感覚になります。チャイムのような甲高い音がちらちら鳴るもと、柳さんの語りや歌声がぼわぼわぼわーん……と反響して聴こえる、宇宙的な世界。
どこへ流れ着くのかもわからず、元の場所へ戻れるのかもわからず、ただひたすらその場所をさまようみたいな浮遊感。そんな心地になる曲です。
スポット動画を拝見したときは、宇宙や異次元空間のなかに伸びる長い道を歩き続けるイメージでした。フルバージョンを聴くと今度は、チャイムめいた音に女性性をつよく感じるようになりました。
絶対的な力でわたしを優しく包み込み、ときに支配し、愛で傷つけるもの。それをメンバーさんへお伝えするなかで「マザー何とかみたいな名前のとってもおおきな敵、その世界を創った女神さま」と表現したことがあります。
それでこの曲をリピートしながらうたた寝をしたとき、おかあさんに名前を呼ばれた気がして、飛び起きたことがあるんですね。瞬間、強制的に子どものときのまっさらな自分に戻らされてしまって、ちょっと困ったのでした。
やっぱり普段はいろんな仮面を身に付けないと生活ができないから、そういう意味でこの曲は、なかなか聴けずにスキップすることもあります。好きとかきらいとか、単純な一言で語るのはむずかしいです。
5.VENOM
やなぎテイスト大炸裂!のハードロックな曲。トレイラーの段階ですぐにピンときたくらい、頭から終わりまでひたすら柳さんを味わえる一曲でした。はじめてライブで聴いたときは、まったく音の波をつかまえられなくて、ちょっぴり悔しい思いをしました。ブレメスの楽曲は全体的にそうなのだけれど、初見で音の波をつかまえるのがものすごくむずかしく感じます。
わたしはその何が起きるかわからない未知数なところに惚れ込んでいるのですが、これがこと「ライブでノリを体感する」となると、なかなか大変。いかんせん横ノリジャンルがホームなので、縦ノリの、とくにこの界隈では手持ちの弾がなさすぎて……。
たとえるなら長縄跳びの感覚なのです。縄のなかに入ろうとタイミングをはかるのだけれど、その場からいっぽも動くことができない悔しさ。入りたくても入れない、圧倒的大敗……ッ!ううう。
でも、いったんその体験をしたからこそ、ある意味では、太いくさびを胸に打ち込まれた曲ともなりました。
そうして全体の流れを把握できてからのぞんだ二度目のライブでは、これがものすごくわくわくして。「……すごい!すごい!ココもココもココも進研ゼミでやったところだぞ!」なドキドキ感で、間奏のモッシュタイムや拳を突きあげる時間は、とっても楽しかったのです。
体力をすべて奪いに来るようなハードチューンだからへとへとになるけれど、これからどんな風にライブへ色を添えていくのか気になります。
さぁ、 愚かしい この僕を笑ってよ
さぁ、 もどかしい この夢を笑ってよ
さぁ、 疎ましい この僕を笑ってよ
さぁ、 毒のまま 悲劇だと語ってよ
この部分は柳さんなりのラブレター、愛の告白なのかなと感じました。
不特定多数の視線を浴びながら表舞台に立って、盲目的に夢を追いかける。そんなすがたを見ていてほしい、見守っていてほしい。そして「キミの夢さえ僕が笑おう」と、リスナーの未来もまた見つめていたい。
ステージ上とフロアとで、お互いの視線がまじり合う関係性というんでしょうか。勝手にそんなふうに解釈したら、一方的に「見られる側」「見る側」とならない関係性のあたたかさが、とっても嬉しかったです。
アートワーク
そんな風に感じられたのは、ジャケットや歌詞カード・円盤のヴィジュアル面の影響も、ものすごく大きいのですよね。なので、前作に引き続きデザインを手がけているRegaさん(Ba.)のセンスには、やっぱりしびれてしまいます。
CDの円盤もジャケットと同じ瞳のデザインなのですが、まんなかの穴が開いている部分がちょうど瞳孔のように見えるのがたまりません。
この他にも、ジャケットの表面でコンセプトを示して裏面はアーティスト写真なところ、視線がぶれない左揃えのレイアウト。フォントサイズや明朝体系の落ち着いた書体などなど、とにかく好きなところがいっぱいです。
とりわけフォントの視覚的効果については、特典の楽曲解説CD(Regaさんver.)で触れてあったので、そ……そのおはなしもっと聴かせてください!って、ちょっと前のめりになっちゃった。バンドのなかでの立ち位置とか、なかなか普段聞けないおはなしがあったのもすてきでした。
またひとつ、お気に入りのアルバムが手元に増えて感謝しかありません。トレイラーの公開からずっと待っていたかいがありました。
嬉しいなあ。嬉しいなあ。これからもっともっと、たくさん聴きたいです。