good night dear

sleep like a baby

20181018/BLESS THIS MESS@池袋EDGE

はじめに

去る10月18日、「ありがとーー!!」「ブレメスありがとーーっ!!」と歓声の鳴りやまない空間に足を運んできました。今年の9月7日にとつぜんの解散発表がなされ、この日の公演をもって活動に終止符を打つことが決まっていたBLESS THIS MESS。それから一週間後に控えていた前回のライブでは、全曲バラードというなんともファン泣かせなセットリストで、聴き手を魅了していました。

一方、続く今回は「湿っぽく終わりたくない」という柳さん(Vo.)の希望を反映してか、暴れ曲やダンスチューンで構成されたセットリスト。別れのさびしさがまったくないと言えば嘘になりますが、バンドの軌跡を歩むような流れを間近で見詰められたおかげで、個人的にはとてもすがすがしい気持ちになれました。

というわけで、正真正銘、ラストレポートです。

ブレメス感想

最後の勇姿を見届けるべく駆け付けたファンの前にブレメスが姿を現したのは、ほかの対バン陣がすべて出番を終え切ったあとでした。フロア後方に設けられた関係者席にはバンドマン然とした男性たちが立ち、腕組みの立ち姿でステージを見つめています。

「やなぎぃーーっ!!」「じんじんじーん!!」「れがれがれがれがーーっ!!」
メンバーを呼び求める男女さまざまの声が鳴りやまない中、ドレスシャツに黒いジャケットを羽織る『MIRROR MIRROR』の衣装をまとった柳さん(Vo.)が、遠くを見据えたままマイクを握ります。

「俺たちは今日解散します」
「バンドが解散する事には未練と後悔しかありません」
「でもバンドはいつか必ず終わります」

いつぞやの公式ブログにも綴られていた想いが今一度紡がれると、その次には「声を聴かせてくれよ。その声が俺たちの細胞に残るから」と、どこまでも柳さんらしい言い回しで最後の願いが落とされました。

barbarism

この日のブレメスは『barbarism』の男くさい演奏からスタート。しょっぱなからヘッドバンギングの嵐を巻き起こして会場を興奮状態にさせると、間髪入れずに『蝋涙に死す。』を叩き付けます。『SLAM DUNK』の桜木花道よろしく赤髪でキメたRegaさん(Ba.)が「裁きをくれ」の歌声にあわせて客席を睨み付ける姿もまた、フロアの興奮をさらに高めていました。

MC

この辺りだったか、曲が終わるやいなや柳さんが上手の舞台袖に捌けてしまいました。次に戻ってきたときにはふたたびマイクを握り、「水飲みたくなっちゃったからMC入れちゃったよ」なる一言。フロアの顔がいっきにほころんだ瞬間です。

「入れる予定なかったのに」と落とされる低めの声に、横から恁さん(Gt.)が目の前のスタンドマイクに顔を寄せ「柳さん、柳さん。予定どおりにいかないもんですね」と言葉を重ねます。こちらもまた目の周りを黒々と塗り囲んだ攻撃的な風貌からは想像のつかないユルさで、恁さんペースを披露していました。

MIRROR MIRROR

MIRROR MIRROR

MIRROR MIRROR

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
しかしそのままアットホームな雰囲気を引きずらないのが、ブレメスの格好よさです。現体制ブレメスの代表曲『MIRROR MIRROR』が始まると、柳さんが「鏡を見ようとしないままの……FOOL!!!」とギアを入れ、会場の空気をいっきに高みへ引き上げました。たちまちRegaさんは鼻に皺が寄るほどの雄叫びをあげ、恁さんは力強く、それでいて冷静に弦を掻き鳴らし、サポートを担う深町 光さん(Dr.)も髪を振り乱してリズムを刻む。そしてそんな四人のスピードに振り落とされないよう、リスナーも全力で「オイ!オイ!」と拳を突き上げていきます。

曲の終盤では柳さんが「キミの夢さえ僕が笑おう」と手のひらを滑らせながら客席を指し示していて、歌詞以上のメッセージ性にたまらなく胸を熱くさせられました。のちのちのMCで語っておられた「バンドはなくなるけど、曲は残る」という言葉を、心から信じたくなります。ブレメスの活動は幕を閉じても、世に出された楽曲はきっとこれからも既存のファンの、新たなファンの、拠り所になっていくのだろうと思います。

Freak Show

Freak Show

Freak Show

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
そんな感情を聴き手に湧き起こしつつ、本編終盤では初期の楽曲『Freak Show』が披露されました。下手のRegaさんは自分の頭を指さしながら客席を挑発したり、演奏をかき消さんばかりの咆哮を上げたりと、とてつもない生命力の塊と化していました。ライブ中には何度も上手のほうまで移動して、客席の顔ひとつひとつに目線を合わせたり、笑顔の口を真横いっぱいに広げて「うおーっ!!」と声を出したり。

そうしたファンサービスを繰り広げていたRegaさんには、目を真っ赤にして、親指の腹で目元の涙を拭っている瞬間も。喜怒哀楽のすべてを剥き出しにするその姿に、おもわず胸が詰まりました。

[blind Circus.]

blind Circus.

blind Circus.

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
最後は『[blind Circus.]』。イントロが流れるやいなや柳さんが「俺の真似をしてくれ!」と言い放ち、腰に片手を添えて膝を上下に落とします。とつぜんの振り付けで観衆を驚かせ、笑顔にさせてしまうのは、フロントマンのなせる業でしょうか。

間奏では恁さんが「きゅいっきゅいっ」「わっちゅっちゅー」とギターの音色をワブルベースのようにうねらせ、柳さんの歌声をどこまでも恁さんのテイストで味付けていきます。そろそろ規制がかかりそうなほど何度となく同じ感想を書き連ねてしまうのですが、おふたり、いえ三人の才能のぶつかり合いをCDという形で手に取れたことは、ほんとうに幸せだとおもいます。

終盤ではオレンジがかった温かい光に包まれて、柳さんの歌声に恁さんとRegaさん、そして会場のコーラスが溶け合い、なんとも多幸感に満ちた空間がうまれていました。と同時に、ああこのコーラスを聴けるのも最後なんだな、と感傷的な想いで胸がちりちりと痛みました。

EN1 & EN2

そんな聴き手の事情はお構いなしに、全5曲のセットリストをまたたく間に駆け抜けていったブレメス。残響音すらなくなったステージがいよいよ無人になると、しかしどこからともなくアンコールが沸き起こりました。

上手と下手から「アンコール!」「アンコール!」と交互に折り重なる声には、少しばかりくぐもった、涙濡れの音も含まれています。男性の力強い声もおおく、会場にのこっている誰もがふたたびの登場を待ち望んでいるようにおもえました。

Old (New) Order

Old (New) Order

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
やがてステージがふっと照明で照らされ、ふたたびメンバーさんたちが姿を現しました。「ひとつになろう!」という柳さんの声から始まった『old 【new】 order』では、開放感たっぷりのクラブサウンドに乗ってステージ上もフロアも一斉にジャンプ。
Persona

Persona

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
その後には、これまでに何度もフロアを湧かせてきた妖し気な人気曲『PERSONA』を乱れ撃ち。本編を終えた安堵感なのか、このときのアンコールでは、メンバーさんたちの表情に和らぎがあるようにかんじました。

たとえばそれは恁さんが下手のRegaさんをくいくいっと逆手で煽ったあと、すすす……とすり足で向かおうとする一幕。Regaさんが脛丈のハーフパンツから伸びる足を器用に動かして、ダンスステップを踏む一幕。柳さんが恁さんの顔を覗き込んで「もう一度!」と歌詞を唱え、愛犬をいとおしむような手付きで顎の下を撫でる一幕。そのどれもが楽しかったからこそ、自然と「ありがとー!!」「ブレメスありがとーっ!!」という声で、去っていくメンバーさんたちを見送ることができました。

EN3

床に座り込んでむせび泣く顔、笑顔で体を寄せ合う顔、最前列に立ったまま動かずじっと紗幕を見つめている顔、いろんな顔が目に飛び込んできます。わたしは前回大泣きしたからでしょうか、参加を諦めていたラストライブに急きょ足を運べたからでしょうか、この日は不思議と晴れやかな気持ちで満たされていました。

するとそのとき「ア゛ンコール゛!!ア゛ンコール゛!!」と真っ黒いステージカーテンの向こう側から太い声が放たれたのです。これにはすっかり帰り支度をしていたリスナーがどっと沸き立ち、なかば弾かれたように定位置へ引き返しながら「あっ、アンコール!アンコール!」とおおきな声を返します。

「ア゛ンコール゛!!ア゛ンコール゛!!」
「アンコール!アンコール!」
「ア゛ンコール゛!!ア゛ンコール゛!!」
「アンコール!!!アン……わぁーーーっ!!」

布一枚越しの掛け合いの末、またしても舞台袖から出てきたメンバーさんたちが最後に披露したのは、彼らを象徴する代表曲『MIRROR MIRROR』。旧体制のころの楽曲で始まり、この曲で締めるという流れがなんとも嬉しく、明日に余力を残そうとしない渾身のギターソロではとうとう感極まって鼻をすすってしまいました。

ブレメスは歩んだ軌跡をいとおしむように、全身全霊のステージングを見せ、トリプルアンコールを含めた約1時間のライブを駆け抜けていきました。最後まで舞台にのこっていた恁さんが胸の前で両手を合わせながら客席に一礼し、上手奥へはけたあとも、会場中からメンバーを呼ぶ声が止まりませんでした。「ありがとーーっ!!」「ブレメスありがとーーっ!!」と、舞台をおおう紗幕の向こう側まで届かんばかりの歓声が、いつまでも鳴り響いていました。

バンドの表層的なところはダークで、攻撃的で、毒々しかったけれど、どの曲もどのライブも根底にはかならず愛が流れていたようにおもいます。誰も彼もが汗びっしょりになり、だけどやり遂げた顔をしていらっしゃいました。メンバー同士でひしと抱き合って、ハイタッチをして。ギターネックにキスをして、ベースを高々と掲げてフロアのコールを煽って。マイクを手にしたまま、ドラムセットの前に倒れ込んで。ときどき天を仰ぎ、あらん限りの力でドラムスティックを振り下ろして。命を燃やし尽くさんばかりにぶつかり合うさまを追いかけられたこと、本当に幸せでした。

格好よかった。最高だった。最高のヴィジュアルロックバンドだった!
短い人生のなかで、こんなにも寂しいとおもえるバンドに出会えてうれしいです。BLESS THIS MESS、音楽をとおして未来に飛び込む勇気を教えてくださってありがとうございました。蘭丸さん(Gt.)や駁さん(Ba.)が居たころを含めて、このバンドがなかったら間違いなく今のわたしは在りません。ずっと自信なく俯いたままで、東京にも出てきていないし、今の仕事もしていないでしょう。

国内や国外のプレイアーさん、驚きや感動を共有してくださってありがとうございました。ライブの回を追うごとに「や゛な゛ぎ、かがってこい゛よ゛ォ!!」と古き良きファンコールが増えていく様子に、いつも痺れていました。行動や態度をもってそれぞれのすきなメンバーさんをひたむきに応援する姿勢は尊敬しかないし、恵比寿のスタンド花も最高にかっこよかった!ありがとう!

というわけで、雑感や過去の記事などは追々またアップしますが、一応これでブレメスのライブレポートはおしまいです。最後はステージに向かってもういちど声をあげたいと思います。

ありがとーーーっ!!ブレメスありがとーーーっ!!

セットリスト

1.barbarism
2.蝋涙に死す。
3.MIRROR MIRROR
4.Freak Show
5.blind Circus.

ENCOLE 1
old【new】order
ENCOLE 2
PERSONA
ENCOLE 3
MIRROR MIRROR

公演情報

DNL presents 『 池袋VorteX 3 』
2018.10.18 [Thu] 池袋EDGE.
BLESS THIS MESS/ジグソウ./DARIAN MARIAN/CHOKE/外道反逆者ヤミテラ/仮病/MYUI
開場 : 16:00/ 開演 : 16:30.

20180914/BLESS THIS MESS@池袋EDGE

はじめに

ザ・ファブル(1) (ヤングマガジンコミックス) いきなり興味ゼロなおはなしで申し訳ないのですが、このところのわたしは、ちょうど年に何度かある「殺し屋に憧れる時期」に差し掛かっていました。良い目をしている、と言われたい時期に差し掛かっていました。それで南勝久せんせいの『ザ・ファブル』という銃撃漫画を開きながら、(まず腕をシュッてして、銃をバンッてして……)とイメージトレーニングに励んでいたのです。

ブレメス解散のお知らせが飛び込んできたのは、そんなある夜のことでした。

えっ……。えっ、どうして?
自分が立っていた場所が、足場からいっきに崩れるような喪失感。わたしは完全に気が動転してしまい、お世話になっている方(※幻覚ではない)へ銃口を向けるゴルゴ13のスタンプを送るなどしてしまいました。

殺害予告めいた物騒なスタンプがとつぜん届くなんて、受け取ったほうはたまったものじゃないですよね。みんなが安心してラインのやり取りができるように、インターネッツ警察のほうでぜひ取り締まるべきだとおもっています。まっさきにわたしが網走刑務所へ送られますが、そこは痛み分けなのです。

というわけで、ここからライブの感想です。

ブレメスの感想

Hymn

www.youtube.com 時刻は18時30分頃。フロアの照明が落とされ、それまで床に座っておしゃべりをしていたお客さんたちが一斉に立ち上がりました。しかしこの日はいつもと様子が違います。普段ならアップテンポなSEが鳴り響くところが、鍵盤の音色がおごそかに響きわたる『Hymn』に変わっているのです。

Elegy of Fate

こうべを垂れて祈りを捧げたくなるような空気に包まれた会場には、誰ひとりとして歓声をあげる者はありません。ライトとスモークとで薄っすらと白くけぶるステージに目を凝らすと、その中央にはなぜか既に柳さん(Vo.)が立っており、スタンドマイクに両手を重ねています。

「わかり合えたはずなのに、離れてしまった」

丁寧に紡がれた歌声が、織姫と彦星を連想させる珠玉のバラード『Elegy of Fate』だと気付き、わたしは半ば弾かれるように鼻をすすってしまいました。去年の7月7日に会場限定盤として販売され、その後フルアルバムにも収録されたものの、セットリストに入る事はなかったこの曲。

それをまさか、対バンのライブで聴けるなんて。楽しい雰囲気に水を差さぬよう泣くまいとさんざん誓って臨んだのに、音色のあまりの美しさに、なんともファン泣かせな幕開けに、一瞬で胸が詰まってしまいました。

Elegy of Fate

Elegy of Fate

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
柳さんは普段の二割増しに甘い歌声で「一番好きなキミだから……」と歌い上げると、続く歌詞はメロディーに乗せずに「”ありがとう”」と普段の話し声で語り掛けます。これほどまでに優しく、そして寂しい「ありがとう」をわたしは聴いた事がありません。

どうしてこんなにも良いバンドが終わってしまうんだろう。本当に解散するの?こうしてライブを観てもまだ、実感がわきませんでした。

slumber

複雑に入り乱れた感情をやり切れず、茫然としていると、サポートを務めるHakuyaさん(Dr.)、立石 恁さん(Gt.)、Regaさん(Ba.)が薄暗いステージに音もなく足を踏み入れます。やがて優しく、どこか物悲しい水音がこぽこぽと聴こえた瞬間、最前列のお客さんたちの空気がはっと揺らぐのを感じました。二曲目はまたしてもバラード、おそらくバンド最大の人気曲であろう『slumber』です。

間奏部分では上手に立つ恁さんの輪郭がライトの下に浮かび上がり、殺傷能力満点のギターソロがはじき出されます。少し歪んだ泣きの音色はまるで聴き手の”今”を代弁しているかのように思われ、またしても目頭が熱くなってしまいました。

この日の恁さんはこれまでのウェービーヘアとは異なり、顎のラインで切りそろえた前下がりのボブ。余計なものをそぎ落とした様相だからこそ、弦をかき鳴らす節ばった指先や歌詞を口ずさむ表情に、何度も目が釘付けになりました。

終盤ではHakuyaさんがゆるく波打った黒髪で顔が隠れるほどおおきく俯いて、唇を真横に引き結び、手元だけを小さく動かしてチッ、チッ、チッ……とかすかなリズムを刻みます。両脇の楽器隊陣も同様に下を向き、「悲しみ悩む事が、苦しみ悩む事でも、キミが選んだらそれでいい」と柳さんの独白めいた歌声が響きます。それが終わるか否かというとき、不意にRegaさんがドラムセットの方を肩越しに振り向き、大サビの入りに合わせておおきくベースを振り下ろしたのです。

瞬間、閃光と言わんばかりの強い光が一気にステージを明るく照らし、柳さんが会場の隅々まで歌を届けるかのように、胸の正面に掲げた両腕をゆっくりと真横へ広げていきます。そして「この眠りに沈めて……この眠りに沈めて……」と神々しいばかりの歌声を響かせるその隣では、Regaさんもまた眉根をぐっと寄せた顔つきで遠くを見据え、同じフレーズを口ずさんでいるのです。

バラード続きとあってか、この日のRegaさんはあまり前へ出てくる事はなく、派手なパフォーマンスはありませんでした。しかしだからこそ、ふとした瞬間の表情や唇の動きが、ますます胸に迫ってくるのを感じました。

悲恋蜉蝣

悲恋蜉蝣

悲恋蜉蝣

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
三曲目は琴の演奏を取り入れた和風曲『悲恋蜉蝣』。ここまで来るともうリスナーの殆どが、今日はバラード縛りのセットリストなのだと気付いた事でしょう。わたしはこの日はじめてバンドアレンジ版?ライブ版?を聴けたのですが、楽器隊の迫力たるや……演奏の主張を抑えてしっとりと聴かせる原曲とはまったく異なる魅力に溢れていて、圧倒されてしまいました。

これから少しずつ、あのとき聴けた『悲恋蜉蝣』の記憶が薄れていくことが本当にもどかしい。決して大袈裟な言い方じゃなく、心からそう思います。Hakuyaさんがずっしりと安定感のある音を決め、そこにRegaさんが顎先でリズムを取りながら低音をうならせます(ベースラインが最高)。恁さんがどこともない宙を見詰め、ぽつぽつと唇に歌を乗せながらギターを奏でます。そうした音のひとつひとつが自分の鼓動と重なる内、ステージとフロアの境界線が取り払われて一緒くたに溶け合うような感覚をおぼえ、心地よくてたまりませんでした。

この曲を聴けたことが本当にうれしい。原曲よりずっと好きになりました。

Lunar Regret

Lunar Regret

Lunar Regret

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
そして最後を締めくくるのは『Lunar Regret』。曲が終わる間際、柳さんはおもむろにマイクスタンドの柱部分を片手で握ると、ずるりとその場に崩れ落ち、最後は顔が隠れてしまうほど俯いてしまいました。メンバーさん達からは何ひとつ言葉の語られないまま、ステージが紗幕に覆われていきます。残されたリスナーたちはしばし面食らったような雰囲気でしたが、やがてどこからともなく拍手が沸き起こり、全曲バラードという怒涛の本編に幕が下りたのでした。

メッセージと共にストーリー性を感じられるライブでした。ブレメスの解散については、正直まだ言葉がまとまりません。個人的な事情で、来月のライブには行けるかどうかもわかりません。今日がバンドを観られる最後だったかもしれないのに、会えなくなる実感もまだありません。こうして文字に書き起こしておきながら、寂しいとかありがとうとか、はっきりとしたラベルを感情に貼れないままでいます。

でも、バンドが最後のときを迎えたなら、今日聴いた『slumber』の一節にあるように「悲しみ悩む事が、苦しみ悩む事でも、キミが選んだらそれでいい」と言えたらいいなとおもいます。

わたしがブレメスに興味を持ったのは、過去に応援していたバンドのメンバーさんたちが再結集したからです。もちろん楽曲の魅力もおおきいのですが、顔ぶれに懐かしさをおぼえたのは間違いありません。だから立ち上げメンバーの蘭丸さん(Gt.)と駁さん(Ba.)が去年脱退したとき、自分のなかではいちどBLESS THIS MESSは終わりました。誤解をおそれずに言えば、その三人の関係性、三人だからこそ生み出せるライブに惹かれていたのです。

でも恁さん(Gt.)とRegaさん(Ba.)があらたに加わり、あたらしいブレメスの魅力をもういちど確認できました。衣装や楽曲からバンド全体に流れる雰囲気まで、おふたりがバンドにもたらしたものは本当におおきいとおもいます。だから、旧体制と新体制のどちらがいいわるいということはまったくなく、わたしはいつでも「今」のブレメスがすき。この三人が織りなす瞬間がとてもすき。そんな気持ちにさせてもらったことにも、またライブへ行ってみようと思わせてくれたことにも、感謝しかありません。

もうすこし落ち着いたら、下北沢モザイク時代からのライブレポをちょこちょこ載せようとおもいます。

セットリスト

1.Elegy of Fate
2.slumber
3.悲恋蜉蝣
4.Lunar Regret

公演情報

池袋EDGE
DNL Present’s-Grotesque New Pop
LIM / 仮病 / BLESS THIS MESS / MEIDARA / DARIAN MARIAN / 他

20180831/BLESS THIS MESS@目黒鹿鳴館

はじめに

BLESS THIS MESSのステージを観るべく、東京は目黒にある老舗のライブハウス「鹿鳴館」へ行ってきました。この日のライブはKRAD主催の5daysイベント「闇夜の宴 Vol.5」、その最終日をかざるというもの。ファイナルとあってか、対バンのバンドさんもお客さんたちも序盤から気合十分の夜でした。

というわけで、またまたライブの感想です。

対バンの印象

NvM

youtu.be
会場の照明がふっと落ち、本編開始を伝えます。ところがステージを覆う生成り色の布紗幕が開くことはなく、メンバー陣であろう四人のシルエットだけがバックサスで黒く浮かび上がっている状態。そうしたドラマティックな演出がオープニングの曲半ばまで続くのです。

しゃがれ気味の歌声や演奏は聴こえるのに、どのバンドが立っているのかわからない。それがちょっと焦れったくもあったのだけれど、だからこそサーッと幕の開いたときの高揚感もひとしお。

緑髪の朋さん(Vo.)は真っ赤なマイクコードを鞭のように床に打ち付けて叫び、ひざ丈のパンツから伸びる墨入りの足で軽快なステップを踏みながらラップを披露します。「ピギャーーー!!」と笛のような甲高いシャウトに背中を押され、フロアの熱気も右肩上がりになっているのをかんじました。終盤のモッシュタイムがとっても楽しかった。

HONEY

youtu.be
ex-VETIQUEのヘヴンさん(Vo.)によるセッションバンドだそうです。過去バンドのオリジナル曲に『UGLY(The Gazette)』や『君の子宮を触る(DEZART)』などのコピー曲を織り交ぜたセットリスト。

UGLY

UGLY

わたしははじめて見聞きする曲ばかりだったのですが、そんな事はお構いなしに楽しい時間でした。とりわけオリジナル曲が印象的で『INVINCIBLE(VETIQUE)』ではファンの方々といっしょになって飛び跳ね、二曲目の『ミーティア』では手拍子と、会場の熱気にすっかり乗せられてしまいました。

終盤ではヘヴンさんが、毛先をピンクに染めたウェービーな茶髪を肩先で揺らし「目黒ーーッ!!行けんのかぁ!?行けんのかぁ、鹿鳴館!!」と笑顔でフロアを挑発します。たちまちハコの前から後ろそこかしこでメロイックサインが突き上がり、好きなメンバーを求める大歓声でのネームコール。その盛り上がりがすごかったので、ライブ本数の少ないセッションバンドと聞いてちょっとびっくりでした。

マゼラン

youtu.be
幕が開けると、トリ前を務めるマゼランさんが姿を現します。銀髪を放射状に逆立てた繭さん(Vo.)が情感たっぷりに歌い上げる『赫い糸』から始まった本編は、幻想的な真っ白いステージ衣装だったこともあってか、舞台の上に仕掛け絵本が開かれたような雰囲気です。

上手のさなさん(Gt.)はコルセットを締め上げているのでしょうか、腰を細く引き絞り、そこから足元に向かって裾広がりになるロングスカートらしき装いをしています。その縦に細長くウエストでくびれる砂時計型のシルエットが、とても印象的でした。90年代のヴィジュアル系バンドみたいな、ちょっとなつかしい感じ。ヘッドバンギングをするとゆらゆらと軟体動物みたいに体が揺れていて、良い意味で人じゃないような、浮世離れした佇まいでした。

終盤に披露されたバラード『Ashley』では、繭さんがステージ中央の高台に崩れ落ちる形でうずくまり、背中を丸めて想いの丈を叫びます。両手でマイクを握り、おそらくは亡くなった想い人”Ashley"への言葉を綴るそのステージングは、一秒たりと目が離せません。最後は物悲しいギターの音だけが会場に残り、湿った拍手の鳴るなかで幕が下りました。

KRAD

youtu.be
一曲目の『絶命歌』が始まると、スモークの立ち込めるステージが姿を現しました。艶のある低音の歌声や泣きの演奏が耳縁をかすめるものの、雲のように濃い煙が視界のすべてを遮ります。ここはどのバンドさんなのかしら……ともどかしい気持ちで目を眇めていると、ふっと強い照明が射し込み、バンドロゴの入った黒地のドロップアウトが浮かび上がりました。

あっ!これがKRADなんだ!

ひとりごちた瞬間、胸の前で力強くマイクを握る宗さん(Vo.)と、ノースリーブの繭さん(Gt.)、顔の下半分を黒い布で覆った悠さん(Ba.)の黒尽くめな顔ぶれをようやく確認します。蜜爪さん(Dr.)だけはまだスモークに隠れていて、それがまたわたしの目をステージに縫いとめて離さないのでした。

謡曲の色を感じるダークなバラード、激しい暴れ曲が立て続けに披露されると、会場はすっかり音に支配されています。

宗さんは今日が5daysイベントの最終夜であることに触れ、「もう五日。始まったときはどうなるかと思ったけど、終わってみればあっという間だった」と一言。ぽつぽつと記憶を手繰るようにステージ上を歩きながら語るのは、このあと披露する新曲についてです。歌メロを意識してメロディアスな感じに仕上げたと明らかにしたあと、「だからしっとり聴いてもいいし……、まぁ、ノリたい人はノってくれてもいい」と曲の楽しみ方を示し、やおら舞台の中央にスタンドマイクを設置します。

す、とひと呼吸を置いて「夢喰い」とタイトルが紡がれると、きっとファンの方には待望だったろうその新曲が響き渡ります。『絶命歌』とこの『夢喰い』の、胸を引っ掻くような湿っぽいメロディーが素敵でした。そして次のハードな曲へ移るときにはそのスタンドを弄ぶように振り回し、自然に舞台後方へ置くまでの一連の流れが、とても格好よかったです。

「全部吐き出せ!ため込んでるもの、全部出せ!」
宗さんが両腕を真横に広げ、会場中を駆け巡るヘッドバンギングの嵐が、その風速をいっそう強めます。そして何度となく繰り返されるモッシュ。フロントマンの指先に挑発されるまま右へ左へリスナーが流れ、かと思えば今度は一斉に後ろへ走っていきます。ときには繭さん(Gt.)が何事か叫びながら上手の壁際をまっすぐに指し、お客さんの衝動をもっともっとと駆り立てるのです。そこから放たれる爆発的な熱量は、体感してこそ。

最後の曲を終えたメンバーさんたちが退場すると、フロアには温かみに溢れた拍手が自然と沸き起こっていました。

ブレメス感想

時間押し気味

youtu.be
不運(ハードラック)と踊(ダンス)っちまって大遅刻、わたしが目黒駅にたどり着いたのは、ブレメスの出演予定時間をおおきく過ぎたころでした。汗と雨とで乱れたざんばら髪の姿が駅の鏡面柱に映り込み、なんともみじめです。

それでも一曲、二曲くらい聴ければという想いでライブハウスの受付へ駆け込んでみると、しかしまったく音漏れがありません。えっ……お、おわ、おわ、終わっちゃった?一気に血の気が引き、フロアへと続く黒扉を押し開きます。

床に座り込むお客さんたちの間を縫い歩き、見知る顔を見つけたときの安堵感といったらもう。この日はたまたま時間が押していて、まだブレメスの出番はきていないとのこと。なんだか膝の力が抜けてしまい、わたしは倒れ込むかたちで席を確保したのでした。

入場

午後17時前、期待と興奮を尻目に本編が始まると、まずは立石 恁さん(Gt.)、サポートを務めるHakuyaさん(Dr.)、Regaさん(Ba.)が登場します。ややあってスモークの奥から柳さん(Vo.)がゆっくりとその姿を現し、「やなぎーーッ!!」「柳、かかってこいよ!!」と、熱狂的な声援が響き渡りました。

蝋涙に死す。

蝋涙に死す。

蝋涙に死す。

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
この日のブレメスは、「裁きをくれ!!」という乞いから始まるのが印象的な『蝋涙に死す。』から始まりました。胸元にドレープの寄った黒いVネックカットソーに、おなじく黒いジャケットとパンツに身を包んだ柳さんの佇まいは、蝋燭に自分の死生をかさねた仄暗い歌詞の世界観に不思議とリンクします。

「BLESS THIS MESSです!よろしくお願いします!!」と硬派に名乗った唇が、次の瞬間には「頭振れ!!」「かかってこい!!」とフロアを挑発する。その緩急の差に煽られるように、高速ヘッドバンギングの嵐が巻き起こりました。いつもこの瞬間がたまらなく気持ちいい。

ステージ中央に設置された高台の上で、柳さんは不意に横向きに立ちます。最前列のリスナーが大きく顎を持ち上げて見つめる中、フロントマンもまた喉仏があらわになるほど思い切り空を仰ぎ、目を閉じ、マイクを宙に垂直に立てて熱唱するのです。そのシルエットが、舞台後方から射し込む暗い橙色のライトに照らされるさまに、すっかり魅せられてしまいました。

MIRROR MIRROR

MIRROR MIRROR

MIRROR MIRROR

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
続く『MIRROR MIRROR』では一転、曲のスピード感をいっそう煽らんばかりに”OIコール”を煽ります。拳を宙に突き上げ、ときに髪を激しく振り乱しながら声を出すフロアの熱量は、この時点ですでに最高潮まで高まっていました。『ミラーミラー』は5月10日の初お披露目から何度となく演奏されているライブの定番曲なのですが、いまだ手垢のつく様子はありません。

この曲のときだったか、下手のRegaさんは不意にドラムセットの方へと駆け寄り、ステージよりも少し高さを出した足場に片足をかけて、ベースの弦をかき鳴らします。すると「鹿鳴館」のネオン文字が真っ赤に浮かび上がる真下で、Hakuyaさんがリズムを刻みながら歯を覗かせます。その一瞬間に、バンドサウンドの土台を底から支えるおふたりの関係性を見たような気がして、わたしもまた笑顔になってしまいました。(追記:これは一曲目のときだったみたい)

[blind Circus.]

blind Circus.

blind Circus.

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
『blind Circus.』では、柳さんのステージングがまた一段と胸に迫ってきます。前回は「僕から言える唯一は、目で見たものが全てじゃない」の「唯一は」で左手の甲を客席へ向けながら人差し指を立てていたのですね。今日はそれに加えて「目で見たものが」と、これもまた手の甲を外に向けた二本指を、自分の目元にぐっと掲げながら、会場を見据えるのです。俺を見ろ!と言わんばかりの鋭い眼差しが、今日はとても印象的でした。

そして終盤では、恁さんがコーラスマイクに唇を寄せ、「ウォーウォー……」と歌い始めます。かと思えば下手のRegaさんもまた同じようにコーラスを響かせるのです。このお二人の雰囲気がぜんぜん違っているのが、聴き手としてはたまりません。

恁さんは目周りを真っ黒に囲んだ瞳でフロアの遠くをまっすぐに見つめ、その攻撃的なメイクとは裏腹に何事か想いを馳せるような佇まいで、やさしい歌声を響かせます。それに対してRegaさんは小麦色に焼けた首筋にじっとりと汗を光らせ、眉根を引きしぼり、これでもかというほど口をおおきく縦にあけて咆哮しているのです。

さらに「一緒に歌ってくれ!!」の合図をきっかけにリスナーも片手を挙げて大合唱。ステージからフロアから無数の歌声が集まるなか、最後に柳さんが「目の前で立ち尽くすキミに幸せ……幸せあれ!」とラストフレーズを決める、この流れが最高!

柳さんがひとりで歌っていた曲にまず恁さんが歌声を重ね、次にRegaさんが重ね、現メンバー三人の歌声を聴けるという流れは、メンバーチェンジを経て今もなお輝きを放つバンドの軌跡をそのまま象徴しているように思われ、感慨深いものがありました。今日、この光景を目にできたことが、ほんとうにうれしい。

Mr. Human Error

最後に初期の楽曲『Mr. Human Error』で締めくくられ、この日の舞台は幕を下ろしました。ブレメスのライブはメンバーさんたちが下手から順に捌け、最後に上手の恁さんが骨ばった手の甲に筋を浮き立たせ、弦をかき鳴らします。わたしの中ではその演出までが本編で、ギターの残響音を体で受け止めると、いつまでもしあわせの余韻が続くのでした。

とにかく今日は柳さんの自信溢れる「かかってこい!」にぐっとトリガーを引かれ、全部受け止めるとばかりに両腕を広げて吠えるRegaさんに魅せられた日でした。そして恁さんがステージの前方ぎりぎりまで身を乗り出して、最前列のお客さんの手や頭にぶつかるのも構わず攻めていたのも、素敵だった。あんなメンバーさんたちを目の当たりにしたら、全身でよろこびを表現せずにはいられません。

機材トラブルこそあったものの、そのなかで足を止めずに闘うブレメスを見られたことをうれしく思います。平成最後の夏の締めくくり、ほんとうに最高の一日でした。

セットリスト

1.蝋涙に死す。
2.MIRROR MIRROR
3.[blind Circus.]
4.Mr. Human Error

公演情報

「闇夜ノ宴vol.5」
日程:2018年8月31日(金)
出演:KRAD / LARZ / BLESS THIS MISS / DUALUZ / マゼラン / NvM / √Honey
Open15:30/Start16:00

漫画『ぼくは麻理のなか』感想

はじめに

ぼくは麻理のなか : 4 (アクションコミックス)
引きこもりの青年と美少女が入れ替わる『ぼくは麻理のなか』(押見修造/全9巻)を、やっとやっと読みました。紙版・電子書籍版が販売されていますが、「マンガBANG!」や「ピッコマ」などの漫画アプリでも無料で読めるみたいです。

君の名は。』の新海誠監督がストーリーに影響を受けたというこの作品。なかなか過激な性描写がおおいので、耐性のないひとだと不快感をおぼえるかもしれません。実際、グーグルで作品名を検索すると「気持ち悪い」って候補が出てくるのですよね。

ただ、わたしはそうした部分も含めて、これはどういう意味かな?どうしてこんなシーンがあるのかな?とたのしめました。というわけで、ここから先はネタバレありの感想です。

あらすじ

大学進学をきっかけに群馬県から上京したものの、友達が一人もいない大学生の小森 功(こもり いさお)。
そんな≪ぼく≫の唯一の楽しみは、コンビニで見かける女子高生を定期的にストーキングすることだった。しかし、いつものように後を追っていたある日、突然記憶が飛んでしまう。目を覚ますと、そこには見知らぬ部屋。≪ぼく≫は、コンビニの彼女≪麻理(まり)≫と入れ替わってしまっていた。

ネタばれ感想

女性の恐ろしさ

押見修造先生の作品に触れるのは、今回が四回目です。中学生男子の思春期を描いた『惡の華』、美貌の毒親にぞっとする『血の轍』、初恋の女性とネカフェのなかで遭難する『漂流ネットカフェ』。いつも「女性の怖さを描くのがお上手だな」とかんじてきたのですが、やっぱり『ぼくまり』でもおなじ震えをおぼえました。

これはあくまでわたしの意見だけれど、「おんな」は世界を作り、守り、包み込むおおきな力を持っていながら、微笑みをたたえた顔でそれをひねりつぶせる非情さもまた、持っているように思います。

そうした姿への畏怖をまざまざと感じるのが、先生の描く女性たちなのです。

キャラクターが美貌の女子高生だろうと生活にくたびれた中年の母親だろうと関係なく、わたしは「おんな」の恐ろしさを見るたびに、胃液の込み上げてくるような気持ちになってしまいました。

と同時に、自分の中の「おんな」を実感するのです。それは決していい気持ちではないのだけれど、「どれだけすました顔をしていても人間はみんな弱いのだよ」と、押見先生の作品はおしえてくださいます。自分をかえりみて、救われる心地がするから、こういう漫画を好んで読むのかもしれません。

麻理の秘密

おはなしの終盤では、麻理がもともと「ふみこ」という名前だったことが明らかになります。父方の母親、つまりお祖母ちゃんが名付けたものの、のちに母親によって「麻理」に改名させられたのです。

母親のエゴイズム

母親がどうして改名したのかですが、子供に対する支配欲かなとおもいます。「ふみこという名前は全然かわいくない」と発言していましたが、名前そのものよりも、お祖母ちゃんそのものが気に入らないという印象でした。

自分がおなかを痛めて”産んであげた”子なのに、”勝手に”自身のセンスとは異なる古風な名前を与えられ、好みにあわない子供服を贈られたり、週に何度も家へ遊びに来られる。そうした距離感への近さからどんどん苛立ちがつのっていく母親。

こうして改めて文章に書き起こしてみると、まんがを離れた現実世界でも、そんなにめずらしくないエピソードのようにかんじます。言ってしまえば、お姑さんとお嫁さんのおはなしだものね。

なので母親の言い分というか気持ちはわからなくもないのだけれど、やっぱり、振り回される麻理には同情してしまいます。

名前を与える意味

「優しい子に育ってほしいから、優子」 「立派なスケート選手みたいになってほしいから、結弦」

こんなふうに、わが子に名前をつけるときは、願望や想いを込めることが多いですよね。だけどすこし見方を変えたなら、そこには大なり小なり親のエゴも含まれています。そうすると名前を与えるという行為は、対象を自分の支配下に置こうとすることなのかもしれません。

だけど同時に、支配されることで、自分は存在していいのだと安心もできるとおもうのです。たとえば「史子」と名前を与えられ、何度となく「ふみこ、ふみこ」と呼ばれるなかで、家族や集団のなかでの居場所ができるんじゃないかなって。

名前を奪われる行為

だから、「ふみこ」が母親のエゴで「今日からあなたは”麻理”よ」と改名させられたとき、いっきに足場の崩れる思いがしたのではないかなと感じました。自我やアイデンティティの拠り所を奪われれば、きっとおとなだって戸惑います。それが幼少期の出来事なら、その苦しさは想像にかたくありません。

結局麻理は、母親のもとめる「かわいい麻理ちゃん」を演じ、そうした現実への逃避から第二の人格「小森 功」を自分のなかに宿すようになりました。ほんとうにストーキングしていたのは小森くんではなく麻理のほうで、彼の生活を観察するなかで得た情報から架空の人格をつくりあげていた、というオチだったのです。

単に女子高生とフリーターの男の子が入れ替わるおはなしじゃなかったんですね。『僕は麻理のなか』というタイトルと小森くん目線ですすむストーリーのせいで、すっかりミスリードしてしまいました。

好きなシーン

小森くんの電話

大学に行かずネットゲームと手慰みに明け暮れていた小森くんが、麻理へ恋したのをきっかけに変わっていくところ(7巻)。伸びっぱなしだった髭を剃り、髪を短く切りそろえた小森くんが、部屋で正座をしたまま電話をかけています。

「バイトの!面接を……お願いしたくてお電話したんですけれども……あっ!こっこっ小森功と言います……!」

どもりながら連絡をする顔つきは、それまでの堕落しきった生活に別れを告げた青年のそれで、なんだか無性にこみあげるものがありました。やがて小森くんはコンビニで働き始めるのですが、最初は備品の置き場所などがわからず、もたもたしてお客さんをいら立たせます。

それでもなんとか自分を変えようと頑張る姿勢は、大丈夫だよ小森くん、大丈夫、大丈夫、と応援したくてたまらなかったです。

20180807/BLESS THIS MESS@池袋EDGE

はじめに

(出典:E.T OFFICIAL)
心待ちにしていたE.T主催のライブ『NEO SPIRITUAL CIRCLE VOl.3』へ行ってきました。あんまり音楽のジャンルにくわしくはないのですが、ロックやラウド系、メタルコア色の強いイベントだったようにおもいます。黒づくめの男性客もちらほら。

この日はBLESS THIS MESSの動員で入ったのですが、どのバンドさんも自分たちの体から放つ熱量だけを武器に戦っているかんじがして、そのストイックさにすっかり心を奪われてしまいました。

開演の17時から終演22時まで、約5時間のロングイベント。事前にタイムテーブルが公開されていたことや、1バンドにつき約30分もの持ち時間があったことも含め、とにかく「行ってよかった!」の一言なのです。

というわけで、各バンドさんの試聴動画を引用しながら、この日の模様を筆圧つよめにふりかえってみます。

対バンの印象

the deadly school

youtu.be
「池袋エッジ、行けますかー!」とイベントのトッパーを務めたのは、ex-RAINDIAのmiyoshiさん(Vo.)によるソロプロジェクト、the deadly schoolさん。

ステージを覆う真っ黒な幕が引かれると、目にあざやかな緑色の髪のmiyoshiさんが、サルエルからのびる裸足で舞台に立つと、胸の前で手のひらを合わせて一礼します。

シンセサウンドを取り入れた同期音楽と歌声が絡みあうなか、星柄の模様を透かしたライトがフロア全体に降りそそぎ、たちまち別世界になります。かと思えばとつぜんふっと明かりが落ちて空襲みたいなサイレンが鳴り響き、胸をざわつかせる場面もありました。

「幸せってなんですか」「人間ってなんですか」「幸せって何なんですか」とくりかえし訴えかけるmiyoshiさん。ライブというよりは、音とひかりと身体表現によるアートを観ているような心地になれました。

THE ENDEMIC OAK

youtu.be
続いて登場したのは黒の革ジャンやダメージスキニーに身を包んだTHE ENDEMIC OAK、通称エンデミさん。
事前に観ていた『RAY OF LIGHT』のリリックビデオがとっても好みでした。ついつい「このセカイは光に満ちている」と口ずさんでしまうキャッチーなメロディーも良いし、最初のサビが終わったあとにバンドロゴが上から落ちてくる演出がツボなのです。

Haruhitoさん(Vo.)がしゃがれ気味のハイトーンを叩き付けると、楽器隊のみなさんも変則的な演奏で続きます。誰もかれもが汗だくになって思いの丈をぶちまけ、ロックチューンを次から次へと畳みかける、ものすごく熱いバンドさんでした。リスナーさん達も夏らしい浴衣姿なのに頭をぶんぶん振り回していて、しびれちゃいます。

それからMCでは、伽羅さん(Ba.)が「誰ひとりコミュ力がないこのバンドが、唯一話せるだいすきなバンド!」といったニュアンスのトークで場をE.Tさんを紹介します。自虐めいた言葉で冗談めかしながらも最大限の敬意を払っていらっしゃる姿勢が、とてもすてきでした。

もっと言えば、この日の出演者さんたちはみなさんそうだったんですよね。ステージが移るたびに「呼んでくれてありがとう!」「E.Tまで繋ごうぜ!」とフロアを引っ張りあげていて、その心意気やバンドさん同士の関係性にぐっと来ました。

ああ、たのしかった。メンバーさんたちの顎下から落ちた大粒の汗が、首筋を流れて喉のくぼみにたまっていくのが見えるたび、その本気の熱量に感化され、自然と笑顔になって拳をつきあげてしまいます。

WE'RE ALL UNDER THE SAME SKY

WE'RE ALL UNDER THE SAME SKY

  • THE ENDEMIC OAK
  • ロック
  • ¥250
この曲もかっこよかった。
フォント&ロゴフェチとしてはぜひぜひジャケット盤を買いたいな。そう思わせてくれる吸引力をかんじました。

Lament.

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四番手として登場したのはLament.さん。
どなたかのアルバムレビューで「名古屋系の系譜をひく古き良きバンド」と紹介されていて、気になっていた演者さんです。この日の顔ぶれのなかで、知識の浅いわたしが知っている「ヴィジュアル系」にいちばん近い雰囲気でした。

他のバンドさんが激しく吠えたり攻撃的なヘッドバンギングをしたり、という雰囲気のなかで、Lament.さんはどこか退廃的な美学を感じさせるたたずまい。

たとえばヴィジュアル面では、白塗りの肌に前髪をそろえた金髪だったり、つばの広い女優帽と長い黒髪だったり、少しウェーブがかった黒髪と腰下まで覆う真っ白なシャツだったり。マイクスタンドには蔓草がぐるぐる巻かれているのですよ。

そして音楽面では、強烈に哀愁を誘うメロディーと悠歌-youka-さん(Vo.)の深みのある声が絡み合い、聴き手のからだを貫きます。ときにはマイクオフで叫んだり髪を振り乱す場面もあったのですが、「わいわい盛り上がる」や「汗をかいて暴れる」楽しみ方とはまた違った、音楽に浸ることの喜びを提示してくださるステージのように感じました。

最後に披露された『つがいの残響』のCDがほしかったのだけれど、まだ発売前なのでした。

LANTANA

youtu.be
最前列の柵にかかったマフラータオルのお洒落さに「あらっ……がっごい゛い゛」と藤原竜也さんのお芝居めいた声を漏らしていると、黒地のバンドTシャツで揃えたLANTANAさんが登場しました。凶悪な、と書くと語弊があるかもしれませんが、攻撃的なヴィジュアルのバンドさん。一曲目からステージを破壊せんばかりの勢いで爆音を轟かせます。

Lament.さんが作り上げた虚無の世界を、すべて音で塗り替えていくようなステージング。二曲目か三曲目の入りでは啓太さん(Dr.)のドラムの合図が一向に始まらず、朋さん(Vo.)が客席を見据えたまま「おいおい、どうした?大丈夫か?」と笑い混じりの声を落とします。思わぬアクシデントが起きても動じる様子はなく、頼もしい雰囲気でした。

そしてそこからはピエロメイクに赤チェックのボンデージパンツで決めた榛葉さん(Ba.)が軽快なトークで繋ぐのです。「ドラムトラブルてーきーな?このままだと一曲少なくなっちゃう、みーたーいーなっ?」と女子高生みたいな口調がフロアの笑いを誘っていて、すごく和やかな雰囲気でした。

「せっかく外が気を利かせて涼しくしてくれてるんだから、ここはE.Tがぶっ倒れるくらい熱くしようぜ」「今日俺たちのライブを観て楽しいと思ったら、何も考えなくていいから、もう一歩だけ前に来い!」
雨模様の天気とかけて、客席を盛り上げる朋さん。そのぐっと手を引っ張られる感じもまた、心地よさを感じました。

いったんライブが中断しようと、再びステージが始まればその猛攻はとどまるところを知りません。会場の熱気はさらに増し、タオル回しや拳を回しながらのヘッドバンギングで埋め尽くされます。ステージとリスナーさんたちが生み出す爆発的な熱量に、口が開きっ放しになるくらい圧倒されてしまいました。かっこよかった!

そうした熱狂のなかで「個人的に思い入れがある曲」と紹介された『泡沫』は、大切なものを失ったやりきれなさを綴る、メッセージ性の強いバラードでした。

「あなたは突然、空へ旅立った」と歌う朋さんの眉間に皺を寄せた悲痛な表情や、口元の前にかかげられる指先の震え、そのひとつひとつに見入ってしまいます。前後の曲とのコントラストの強さに、微動だにできなくなってしまいました。

E.T

youtu.be
デジタルフライヤーを見た瞬間、グランジスタイルのフォントや素材のテクスチャーにひとめぼれしたバンドさん。アートワークが好みだと音楽もツボなことが多いのですが、その期待どおり『Still Alive』のMVですっかり心をつかまれていました。

真っ青な照明とステージ上に焚かれたスモークが宇宙的な雰囲気を作り出す中、全身黒色の衣装でそろえたメンバーさんたちがステージ上にあらわれます。

「?W◎Θ▽%……ポゥ!!」と奇声を発していた浩さん(Vo.)が赤いマイクケーブルを鞭のようにしならせると、そのあまりの勢いの良さに吊り照明に引っかかってしまいました。開幕早々のその一瞬だけで、なんだか只者じゃなさそうだと、期待が加速していきます。

浩さんはなかば白目をむきながら小刻みに体を震わせたり、全開の笑顔で「ありがピョー!!ありがピョー!!」と客席に手を振ったり、一星さん(Ba.)と映画『E.T』の指さしポーズをするなど、自由そのものです。

他のメンバーさんたちもベースを立てて弾いたり踊ったり、前につんのめる勢いで跳ねながら演奏したり、サークルモッシュするリスナーさん達をスティックで指したり、アッパーな流れでどんどんフロアを巻き込んでいきます。

かと思えば本編の途中には、バックサスをつかった演出が何度となくありました。薄霧の向こう、逆光に四人のシルエットがぼんやりと浮かび上がる光景が、まぶたの裏に強く焼き付いています。曲としても演出としても、ただ激しいだけではなくて、人の内面のやわらかさ・美しい瞬間に触れられるのもすごく好きでした。

念願の『Still Alive』は目頭が熱くなりました。あと、壁を押すように片手を前に出しながらツーステップを踏む曲も。(追記:『Fortune』という曲みたい)

「猛暑にやられても、酷暑にやられても、ちょっと立ち止まってもいいんだよ。でもまた、歩き出すときがきたら、そのときは一緒に頑張っていきましょう」といったメッセージが放たれた時、ああ今日が終わってほしくないなあという気持ちでいっぱいになってしまって。ブレメスはもちろん前回のステージよりさらに楽しかったのだけれど、このイベントの出演バンドさんが全部楽しかったのですよね。

そして浩さんが真っ赤なマイクケーブルを手持ち無沙汰に持て余したり、勢いよくステージに叩き付ける様子には、なぜだか不思議と、人生を生きることのむずかしさ・もどかしさを連想させられました。はじめて尽くしの音楽体験でしたが、本当にすてきなイベントでした。

というわけで、フルアルバム『DO NOT BELONG TO ANYTHING』を購入。喉の奥に指を突っ込んで「ヴォエッ」と吐いているような曲と、ツーステップを踏む曲と……これもまたはじめて尽くしだから、たくさん聴きます。

ブレメス感想

蝋涙に死す。

youtu.be
バンドネームを唱えるSEと共に登場したのは、黒を基調とした衣装に身を包んだBLESS THIS MESSのメンバー。鳴りやまない歓声を受け止めた四人が最初に投下したのは、先月発売されたばかりのミニアルバム収録曲、『蝋涙に死す。』でした。

蝋涙に死す。

蝋涙に死す。

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
真っ赤に染まるフロアへ乗り出す勢いで「裁きをくれ!」「頭振れ!!」と挑発する柳さん(Vo.)に、リスナーは高速ヘッドバンギングで応え、手のひらを高く掲げます。

MIRROR MIRROR

続く『MIRROR MIRROR』では疾走感たっぷりの曲に合わせて熱いOIコールが沸き起こるなど、冷房のきいたライブハウスの気温が一気に上昇していきます。

それから、立石 恁さん(Gt.)が自己紹介代わりの音色をかき鳴らす……はずのギターソロでは、とつぜんふっと音が立ち消えました。ん?といった表情で足元に置いたエフェクターのペダルを踏んだり、スタッフさんが舞台袖から顔を出したりと、なにやらあわただしい様子。

終演後に更新されたツイッターによると、柳さんがギターのケーブルを踏んで電源を切ってしまったとのこと。きっと楽しくなっちゃったんですね!

[blind Circus.]

そんなアクシデントがあっても、生だからこそのスリルとグルーヴに会場の熱気はとどまることを知りません。

blind Circus.

blind Circus.

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
すっかり温まった会場に落とされたのは「こっちへ来ないで」と拒絶の言葉からはじまる『[blind Circus.]』。自分の胸元を力強く指し示した柳さんは「僕からいえる唯一は、目で見たものがすべてじゃない」と言い切って、手の甲を外側にむけた人差し指を突き上げます。

どこまでも毒気のあふれる曲は、しかし終盤へ進むにつれ「キミに幸せあれ」とリスナーの明日を祝福するラブソングの顔を覗かせます。柳さんが「声をくれ!!」と焚き付け、たちまちフロアに沸き起こるシンガロング。恁さんもまたコーラスマイクに顔を寄せて「ウォーウォー」と柔らかく掠れた声を重ね、もはや客席とステージの垣根はどこにも見当たりません。

この日のライブはRegaさん(Ba.)の野性的なシャウトも聞こえ、ものすごく熱かったのです。唯一無二なフロントマンの歌声を弦楽器隊が両脇から支えるバンド感によって、音がますます立体的に聴こえるというか。CDとはまた違ったリアルな手触りが今日の対バンの雰囲気にも合っていたし、もっといえば今のブレメスにも合っている気がしました。コーラスのあるバンドさんはとっても最高!

MC

「こんにちは。ブレス……、ディス……、メスです!!」
柳さんが喉元にじっとりと汗を光らせ、浮き出た喉仏を上下させながらバンドネームを口にします。MCでようやくお顔をじっくり見る余裕ができたのですが、くさむらの影から獲物を狙う蛇、のような目をされていました。なんだかオフィシャルアカウントの「アツいバンドさんたちと”音”で勝負したい」という言葉が不意に思い出され、バンドの放つエネルギーに膝の力が抜けてしまいそうでした。

今日のブレメス、かっこよすぎじゃないかな?
ハンドクラップじゃなくて、泡を吹いて倒れるくらいしたほうがいいかな?
とあたまの中を忙しくしていると、柳さんが「俺たちの始まりの曲」と次のナンバーを紹介し、その言葉にわっと歓声がわき起こります。実はこのときわたしは『Answer』という初期の曲を連想したのですが、良い意味でその期待は裏切られました。

Lunar Regret

Lunar Regret

Lunar Regret

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
物悲しいピアノの音色が静寂を切り裂き、月をテーマにした壮大なバラード『Lunar Regret』が会場の隅々まで広がっていきます。しっとりと、そして確実に聴き手のこころへ入ってくる音と言葉にすっかり魅了されてしまいました。

池袋EDGEは音も照明も抜群に良い、とはうかがっていましたが、その前評判にたがわぬとおりでした。歌声がこちらへ届くたびに袖や胸元の布地が震える感覚があって、この環境でこのバラードを堪能できたことがとてもうれしかったです。

恁さんはといえば、ギターソロで弦を掻き鳴らすと共に感情がたかぶっていく様子。この曲は終始「ギュワワワワーン!ギュイイイイン!」と歪んだ音がうねっているイメージだったのですが、「キュピーーーン!キュイイイイイン!」と徐々に音程の上がっていくおもちゃみたいな音が使われているのを、この日はじめて知りました。
ああ、すてき、すてき!100点!

そしてそして、Regaさんの体当たりのステージング。最高!最高!最高!

6月5日の高田馬場AREAで観たルナリグもすごく鬼気迫る演奏だったのだけれど、今日はそれを上回る衝撃でした。アウトロでがくんと両膝をついたかと思うと、床に顔がつきそうなほど背中を丸め、ベースをお腹に抱え込むようにして弦をかき鳴らすのです。

眉間に深いしわを刻んでまぶたを閉じたり、頭をぐしゃぐしゃにかき乱したり。楽曲の持つストーリーがさらに厚みを増し、Regaさんの内側からわきあがる熱量を肉眼的にもたのしむことができて、すごく感激しました。

old【new】order

Old (New) Order

Old (New) Order

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
「次がラストだぞ!」と始まったのは、ライブではおなじみの『old【new】order』。 宇宙を思わせる真っ青なライトが降り注ぐなか、開放感たっぷりの曲に合わせてリスナー全員でフロアを揺らします。

この曲のときだったか、Regaさんと恁さんがドラムセットへ近寄って、サポートを務める深町晃さん(Dr.)のお顔を何度も下からのぞき込むワンシーンがありました。もともと同じバンドで活動されていた仲だからこそのちょっかいに、その当時をまったく知らない自分も胸があたたかくなって、頬が緩んでしまいました。

やがて演奏が終わり、ステージに静寂が訪れます。しかしメンバーさん達はどなたもその場に立って俯き、誰も退場しようとしません。いつものようにメロイックサインを掲げて見送ってよいものか迷ったそのとき、不意に舞台がぱっと照らされ『PERSONA』のジャジーな音色が鳴り響きます。

PERSONA

Persona

Persona

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
まさかのサプライズにわっと歓喜の声があがる中、「本当のラストはこの曲だぜ!」と柳さんがフロアの熱を煽るのです。不敵な笑みを浮かべるその表情のなんともうれしそうなこと。最後までリスナーの度肝を攻めぬく演出に、興奮が止まりません。

ああ、またプレイアーさんたちとペルソナを踊れてうれしい!柳さんも恁さんもRegaさんも体をゆらしておどってた。深町さんはドラムを叩きながら口をぱかっと開いて笑ってた。すてき、すてき!それぞれが独立した個性を放ちながら曲の輪郭を描き、時にはぶつかったり離れたりしながらバンドサウンドを作り上げていくさまを、目の前で観られることがとってもうれしい。

総力戦の音を叩き付け、いつも以上にメーターの振り切れた熱いステージ。メンバーさん達がやりきった顔で去ったあとも、客席の晴れやかな表情が消えることはありませんでした。もうもうもう今日はイベント全編をとおして大満足、どのバンドさんもリスナーさんも、みんなとってもかっこ良かったです。

セトリ

1.蝋涙に死す。
2.MIRROR MIRROR
3.[blind Circus.]
4.Lunar Regret
5.old【new】order
6.PERSONA

公演情報

2018/8.7(tue) 池袋EDGE
E.T主催EVENT
「NEO SPIRITUAL CIRCLE Vol.3 」

E.T/LANTANA/Lament./THE ENDEMIC OAK/BLESS THIS MESS/the deadly school