good night dear

sleep like a baby

20180831/BLESS THIS MESS@目黒鹿鳴館

はじめに

BLESS THIS MESSのステージを観るべく、東京は目黒にある老舗のライブハウス「鹿鳴館」へ行ってきました。この日のライブはKRAD主催の5daysイベント「闇夜の宴 Vol.5」、その最終日をかざるというもの。ファイナルとあってか、対バンのバンドさんもお客さんたちも序盤から気合十分の夜でした。

というわけで、またまたライブの感想です。

対バンの印象

NvM

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会場の照明がふっと落ち、本編開始を伝えます。ところがステージを覆う生成り色の布紗幕が開くことはなく、メンバー陣であろう四人のシルエットだけがバックサスで黒く浮かび上がっている状態。そうしたドラマティックな演出がオープニングの曲半ばまで続くのです。

しゃがれ気味の歌声や演奏は聴こえるのに、どのバンドが立っているのかわからない。それがちょっと焦れったくもあったのだけれど、だからこそサーッと幕の開いたときの高揚感もひとしお。

緑髪の朋さん(Vo.)は真っ赤なマイクコードを鞭のように床に打ち付けて叫び、ひざ丈のパンツから伸びる墨入りの足で軽快なステップを踏みながらラップを披露します。「ピギャーーー!!」と笛のような甲高いシャウトに背中を押され、フロアの熱気も右肩上がりになっているのをかんじました。終盤のモッシュタイムがとっても楽しかった。

HONEY

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ex-VETIQUEのヘヴンさん(Vo.)によるセッションバンドだそうです。過去バンドのオリジナル曲に『UGLY(The Gazette)』や『君の子宮を触る(DEZART)』などのコピー曲を織り交ぜたセットリスト。

UGLY

UGLY

わたしははじめて見聞きする曲ばかりだったのですが、そんな事はお構いなしに楽しい時間でした。とりわけオリジナル曲が印象的で『INVINCIBLE(VETIQUE)』ではファンの方々といっしょになって飛び跳ね、二曲目の『ミーティア』では手拍子と、会場の熱気にすっかり乗せられてしまいました。

終盤ではヘヴンさんが、毛先をピンクに染めたウェービーな茶髪を肩先で揺らし「目黒ーーッ!!行けんのかぁ!?行けんのかぁ、鹿鳴館!!」と笑顔でフロアを挑発します。たちまちハコの前から後ろそこかしこでメロイックサインが突き上がり、好きなメンバーを求める大歓声でのネームコール。その盛り上がりがすごかったので、ライブ本数の少ないセッションバンドと聞いてちょっとびっくりでした。

マゼラン

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幕が開けると、トリ前を務めるマゼランさんが姿を現します。銀髪を放射状に逆立てた繭さん(Vo.)が情感たっぷりに歌い上げる『赫い糸』から始まった本編は、幻想的な真っ白いステージ衣装だったこともあってか、舞台の上に仕掛け絵本が開かれたような雰囲気です。

上手のさなさん(Gt.)はコルセットを締め上げているのでしょうか、腰を細く引き絞り、そこから足元に向かって裾広がりになるロングスカートらしき装いをしています。その縦に細長くウエストでくびれる砂時計型のシルエットが、とても印象的でした。90年代のヴィジュアル系バンドみたいな、ちょっとなつかしい感じ。ヘッドバンギングをするとゆらゆらと軟体動物みたいに体が揺れていて、良い意味で人じゃないような、浮世離れした佇まいでした。

終盤に披露されたバラード『Ashley』では、繭さんがステージ中央の高台に崩れ落ちる形でうずくまり、背中を丸めて想いの丈を叫びます。両手でマイクを握り、おそらくは亡くなった想い人”Ashley"への言葉を綴るそのステージングは、一秒たりと目が離せません。最後は物悲しいギターの音だけが会場に残り、湿った拍手の鳴るなかで幕が下りました。

KRAD

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一曲目の『絶命歌』が始まると、スモークの立ち込めるステージが姿を現しました。艶のある低音の歌声や泣きの演奏が耳縁をかすめるものの、雲のように濃い煙が視界のすべてを遮ります。ここはどのバンドさんなのかしら……ともどかしい気持ちで目を眇めていると、ふっと強い照明が射し込み、バンドロゴの入った黒地のドロップアウトが浮かび上がりました。

あっ!これがKRADなんだ!

ひとりごちた瞬間、胸の前で力強くマイクを握る宗さん(Vo.)と、ノースリーブの繭さん(Gt.)、顔の下半分を黒い布で覆った悠さん(Ba.)の黒尽くめな顔ぶれをようやく確認します。蜜爪さん(Dr.)だけはまだスモークに隠れていて、それがまたわたしの目をステージに縫いとめて離さないのでした。

謡曲の色を感じるダークなバラード、激しい暴れ曲が立て続けに披露されると、会場はすっかり音に支配されています。

宗さんは今日が5daysイベントの最終夜であることに触れ、「もう五日。始まったときはどうなるかと思ったけど、終わってみればあっという間だった」と一言。ぽつぽつと記憶を手繰るようにステージ上を歩きながら語るのは、このあと披露する新曲についてです。歌メロを意識してメロディアスな感じに仕上げたと明らかにしたあと、「だからしっとり聴いてもいいし……、まぁ、ノリたい人はノってくれてもいい」と曲の楽しみ方を示し、やおら舞台の中央にスタンドマイクを設置します。

す、とひと呼吸を置いて「夢喰い」とタイトルが紡がれると、きっとファンの方には待望だったろうその新曲が響き渡ります。『絶命歌』とこの『夢喰い』の、胸を引っ掻くような湿っぽいメロディーが素敵でした。そして次のハードな曲へ移るときにはそのスタンドを弄ぶように振り回し、自然に舞台後方へ置くまでの一連の流れが、とても格好よかったです。

「全部吐き出せ!ため込んでるもの、全部出せ!」
宗さんが両腕を真横に広げ、会場中を駆け巡るヘッドバンギングの嵐が、その風速をいっそう強めます。そして何度となく繰り返されるモッシュ。フロントマンの指先に挑発されるまま右へ左へリスナーが流れ、かと思えば今度は一斉に後ろへ走っていきます。ときには繭さん(Gt.)が何事か叫びながら上手の壁際をまっすぐに指し、お客さんの衝動をもっともっとと駆り立てるのです。そこから放たれる爆発的な熱量は、体感してこそ。

最後の曲を終えたメンバーさんたちが退場すると、フロアには温かみに溢れた拍手が自然と沸き起こっていました。

ブレメス感想

時間押し気味

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不運(ハードラック)と踊(ダンス)っちまって大遅刻、わたしが目黒駅にたどり着いたのは、ブレメスの出演予定時間をおおきく過ぎたころでした。汗と雨とで乱れたざんばら髪の姿が駅の鏡面柱に映り込み、なんともみじめです。

それでも一曲、二曲くらい聴ければという想いでライブハウスの受付へ駆け込んでみると、しかしまったく音漏れがありません。えっ……お、おわ、おわ、終わっちゃった?一気に血の気が引き、フロアへと続く黒扉を押し開きます。

床に座り込むお客さんたちの間を縫い歩き、見知る顔を見つけたときの安堵感といったらもう。この日はたまたま時間が押していて、まだブレメスの出番はきていないとのこと。なんだか膝の力が抜けてしまい、わたしは倒れ込むかたちで席を確保したのでした。

入場

午後17時前、期待と興奮を尻目に本編が始まると、まずは立石 恁さん(Gt.)、サポートを務めるHakuyaさん(Dr.)、Regaさん(Ba.)が登場します。ややあってスモークの奥から柳さん(Vo.)がゆっくりとその姿を現し、「やなぎーーッ!!」「柳、かかってこいよ!!」と、熱狂的な声援が響き渡りました。

蝋涙に死す。

蝋涙に死す。

蝋涙に死す。

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
この日のブレメスは、「裁きをくれ!!」という乞いから始まるのが印象的な『蝋涙に死す。』から始まりました。胸元にドレープの寄った黒いVネックカットソーに、おなじく黒いジャケットとパンツに身を包んだ柳さんの佇まいは、蝋燭に自分の死生をかさねた仄暗い歌詞の世界観に不思議とリンクします。

「BLESS THIS MESSです!よろしくお願いします!!」と硬派に名乗った唇が、次の瞬間には「頭振れ!!」「かかってこい!!」とフロアを挑発する。その緩急の差に煽られるように、高速ヘッドバンギングの嵐が巻き起こりました。いつもこの瞬間がたまらなく気持ちいい。

ステージ中央に設置された高台の上で、柳さんは不意に横向きに立ちます。最前列のリスナーが大きく顎を持ち上げて見つめる中、フロントマンもまた喉仏があらわになるほど思い切り空を仰ぎ、目を閉じ、マイクを宙に垂直に立てて熱唱するのです。そのシルエットが、舞台後方から射し込む暗い橙色のライトに照らされるさまに、すっかり魅せられてしまいました。

MIRROR MIRROR

MIRROR MIRROR

MIRROR MIRROR

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
続く『MIRROR MIRROR』では一転、曲のスピード感をいっそう煽らんばかりに”OIコール”を煽ります。拳を宙に突き上げ、ときに髪を激しく振り乱しながら声を出すフロアの熱量は、この時点ですでに最高潮まで高まっていました。『ミラーミラー』は5月10日の初お披露目から何度となく演奏されているライブの定番曲なのですが、いまだ手垢のつく様子はありません。

この曲のときだったか、下手のRegaさんは不意にドラムセットの方へと駆け寄り、ステージよりも少し高さを出した足場に片足をかけて、ベースの弦をかき鳴らします。すると「鹿鳴館」のネオン文字が真っ赤に浮かび上がる真下で、Hakuyaさんがリズムを刻みながら歯を覗かせます。その一瞬間に、バンドサウンドの土台を底から支えるおふたりの関係性を見たような気がして、わたしもまた笑顔になってしまいました。(追記:これは一曲目のときだったみたい)

[blind Circus.]

blind Circus.

blind Circus.

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
『blind Circus.』では、柳さんのステージングがまた一段と胸に迫ってきます。前回は「僕から言える唯一は、目で見たものが全てじゃない」の「唯一は」で左手の甲を客席へ向けながら人差し指を立てていたのですね。今日はそれに加えて「目で見たものが」と、これもまた手の甲を外に向けた二本指を、自分の目元にぐっと掲げながら、会場を見据えるのです。俺を見ろ!と言わんばかりの鋭い眼差しが、今日はとても印象的でした。

そして終盤では、恁さんがコーラスマイクに唇を寄せ、「ウォーウォー……」と歌い始めます。かと思えば下手のRegaさんもまた同じようにコーラスを響かせるのです。このお二人の雰囲気がぜんぜん違っているのが、聴き手としてはたまりません。

恁さんは目周りを真っ黒に囲んだ瞳でフロアの遠くをまっすぐに見つめ、その攻撃的なメイクとは裏腹に何事か想いを馳せるような佇まいで、やさしい歌声を響かせます。それに対してRegaさんは小麦色に焼けた首筋にじっとりと汗を光らせ、眉根を引きしぼり、これでもかというほど口をおおきく縦にあけて咆哮しているのです。

さらに「一緒に歌ってくれ!!」の合図をきっかけにリスナーも片手を挙げて大合唱。ステージからフロアから無数の歌声が集まるなか、最後に柳さんが「目の前で立ち尽くすキミに幸せ……幸せあれ!」とラストフレーズを決める、この流れが最高!

柳さんがひとりで歌っていた曲にまず恁さんが歌声を重ね、次にRegaさんが重ね、現メンバー三人の歌声を聴けるという流れは、メンバーチェンジを経て今もなお輝きを放つバンドの軌跡をそのまま象徴しているように思われ、感慨深いものがありました。今日、この光景を目にできたことが、ほんとうにうれしい。

Mr. Human Error

最後に初期の楽曲『Mr. Human Error』で締めくくられ、この日の舞台は幕を下ろしました。ブレメスのライブはメンバーさんたちが下手から順に捌け、最後に上手の恁さんが骨ばった手の甲に筋を浮き立たせ、弦をかき鳴らします。わたしの中ではその演出までが本編で、ギターの残響音を体で受け止めると、いつまでもしあわせの余韻が続くのでした。

とにかく今日は柳さんの自信溢れる「かかってこい!」にぐっとトリガーを引かれ、全部受け止めるとばかりに両腕を広げて吠えるRegaさんに魅せられた日でした。そして恁さんがステージの前方ぎりぎりまで身を乗り出して、最前列のお客さんの手や頭にぶつかるのも構わず攻めていたのも、素敵だった。あんなメンバーさんたちを目の当たりにしたら、全身でよろこびを表現せずにはいられません。

機材トラブルこそあったものの、そのなかで足を止めずに闘うブレメスを見られたことをうれしく思います。平成最後の夏の締めくくり、ほんとうに最高の一日でした。

セットリスト

1.蝋涙に死す。
2.MIRROR MIRROR
3.[blind Circus.]
4.Mr. Human Error

公演情報

「闇夜ノ宴vol.5」
日程:2018年8月31日(金)
出演:KRAD / LARZ / BLESS THIS MISS / DUALUZ / マゼラン / NvM / √Honey
Open15:30/Start16:00