20180703/BLESS THIS MESS@恵比寿 club aim
ブレメス感想
BLESS THIS MESSのワンマンライブへ行ってきました。
この日は「60分間限定無料ライブ」とめいうたれた本編と、プレミアムチケットを購入したひと限定のイベントの二本立て。まずは100点満点中53億点だった、本編のステージについて印象を書き記したいとおもいます。
というわけで、下書きなしの感想です。あとで読み返したらとっても恥ずかしくなっちゃいそうだけれど、いまの感情のまま書いてみますね。
harutsugedolly.hatenablog.com
プレミアムライブの感想はこちらからどうぞ。
序盤
はやく始まってほしい気持ちと、この日が終わってほしくない気持ち。複雑な感情が入り乱れるなか、ステージを覆う黒幕が、ザッと真下に落ちました。「BLESS THIS MESS」と白抜き文字の記された黒地のドロップアウトをバックに背負う舞台上、まずはいつものとおり立石 恁さん(Gt.)とサポートドラムのHakuyaさん、Regaさん(Ba.)が続々と入場してきます。
最後に足を踏み入れた柳さん(Vo.)がセンターに立つと、この日最初に静寂を切り裂いたのは、泉の底から水が湧きあがるような美しいメロディーでした。
ずっとこのバンドを応援しているリスナーさんなら、いえ、きっとはじめて耳にする方でも反応せずにはいられない、もの悲しい音色。ながらく姿をひそめていた初期の名曲『slumber』、そのバラードによる幕開けに、たちまち会場内の空気が湿り気を帯びていきます。
両手で口をおさえる人、鼻をすする人、そうした景色がひろがる中、わたしもまた、ふかく俯きました。少しでも気を抜くと嗚咽が漏れてしまいそうで、肩を震わせてこらえるしかなかったのです。
この曲は、まだバンドが「Starwave Records」のレーベルに所属する前の時代に生まれたもの。柳さんが「今でも支えてくれるすべての人たちへ、遺作のつもりで」つくったファーストフルアルバム『Hymn』の収録曲です。
一年前、二年前のワンマンライブではかならず披露されるほどの人気があり、その度に会場を涙の色に濡らしていました。
そんな『slumber』を最後に生で聴いたのは、2017年の5月28日、前メンバーの蘭丸さん(Gt.)と駁さん(Ba.)が脱退したワンマンライブの日です。
終演後のドリンクカウンターで、当時のファンの人たちと話したことが、ふとまぶたの裏に浮かびます。「ねえ、これから誰がslumber弾くのかな」と切り出し、「誰が弾けるのかしら」と言い直したあの夜。ややあって「ジンしかいないでしょ」と、柳さんの親友の名前が返ってきた、あの夜。
そうだよね、と声を揃えながらも、とうぜんファンは何も干渉できず、ただ次の活動を願うしかなかったこと。その中でそれぞれが、別れの傷口を塞いでいくしかなかったこと。バンドの再始動と恁さんの加入が発表されて、柳さんにファンメールを送ったこと。
そこからやっとなのです。やっと、本当にやっと、今のブレメスの『slumber』を聴けた。もうもうもう、感無量なのです。
曲の前半部分にはほとんど演奏の聞こえない静けさが流れ、たとえるなら柳さんの独白めいた時間がつづきます。それが「この眠りに沈めて……この眠りに沈めて……」と悲痛なねがいを吐き出したその瞬間、それまで息をひそめていた楽器隊が一気に呼吸をして、音を鳴らすのです。
唇をきゅっと引き結び、からだいっぱいを使ってドラムを打ち鳴らすHakuyaさん。しっかと地面を踏みしめ、低音でバンドを底から押し上げるRegaさん。眉間に葉脈のような深い皺をきざみ、ギターの弦をかき鳴らす恁さん。
全員がフロントマンに寄り添い、支える、そのバンド感に、どうしても涙が止まりませんでした。報われた、浄化された、救われた、この気持ちをなんと表現したらいいのかわかりません。
ただ、ずっと応援してきてよかった。これからも応援したい。その気持ちがますます強まった瞬間でした。
中盤
やがてふたたび静寂へ近づくにつれ、柳さんはゆっくりと片手を胸に添え、仰々しい一礼をしてみせます。
ブレメスの活動初期を飾って色褪せない名曲の余韻だけがのこる中、しかし今度はカルティックな『蝋涙に死す。』が容赦なく叩きおとされ、会場を狂信的ないろ一色に塗り替えました。
疾走感を保ちつづけて駆ける『MIRROR MIRROR』、攻撃的なラップが炸裂する『Freak Show』と畳み掛けるそのあいまには、柳さんがフロアへ語りかけるひと幕もありました。
「やなぎやなぎやなぎーーーッ!!」
「じんじんじんじーーーん!!」
「れがれがれがーーーッ!!」
「はくやーーーッ!!はくやはくやーーーッ!!」
柵から身を乗り出してでもメンバーを求める声が鳴り止まないなか、ようやく柳さんが口を開きます。
「俺、今日、すげー楽しいよ。ライブがすげー楽しいよ!」
こうした心からの言葉は、公演中、何度も何度も聞かれました。
「好きに踊ってくれ!!」その声をきっかけにキャバレークラブの管楽器めいた音色が鳴りひびき、ダンスミュージック『PERSONA』の登場。またしても久しぶりとなる人気曲にリスナーさんたちは歓喜のどよめきをあげ、一斉に両手をあげて自由にからだを揺らします。 「Lost Venus……」と繰り返す声がしだいに攻撃的なシャウトへ変わるに合わせ、こちらも休みなしの高速折りたたみで応戦。恁さんはギターをかき鳴らしながらも、軽快な足さばきでダンスステップを踏み、フロアのボルテージはいよいよ増すばかり。
そうして新旧織り交ぜた曲がつづく中盤戦、今度は翌日リリースのミニアルバムより、表題曲『[blind Circus.]』が演奏されます。 前回いちはやく先行を聴いたときにもかんじたのだけれど、やっぱりこの曲の間奏はものすごくかっこいいのです。楽器隊の音が奈落の底からせり上がってくるような迫力で、無我夢中になって髪を振り乱しながら、音の世界に心酔してしまいます。
途中、ベースとギターがものすごく色っぽいところがあって、どの部分なのか、はやくCDを聴いて確認しなくちゃという気持ちに駆られています。
この「色気」というのは、新章ブレメスをあらわすひとつのキーワードなのかなと思っていて。ブレメスはどのメンバーさんに関しても、ストレートに官能的な言葉を使ってファンの扇情をあおるようなステージングはしません。
だけど大人の、歳を重ねた男性ならではの色香がむせかえるほど匂い立っているのですよね。
たとえばそれは、普段は腕組みをしてそっぽを向いている恁さんが、ふいにフロアを射抜く鋭い視線。マイク越しに落とされる柳さんの熱い息遣い、目の前にある顔をトントントン、と順に指し示す指先。歯をぐっと食いしばってベースを頭上に振りかぶったり、いきおいよく回転させるRegaさんの躍動感。
若さの肉が削ぎ落とされ、そのぶん「今」この瞬間を生きている者ならではの成熟した魅力が、色気として垣間見えるのかもしれません。
そこからつづくのは、塊のような音のつぶてをこれでもかと浴びせかける、攻撃的な『VENOM』。楽器隊陣の太くスリリングな音が、オーディエンスに迫ってきます。 前回はじめて先行を聴いたときには、目の前が真っ白になって「何が起きているのかわからなかった」のだけれど、この日は頭から最後まで、音を遊び尽くせてとってもたのしかったです。上手と下手へ駆け回るモッシュタイムにヘッドバンギング、会場の熱気はとどまるところを知りません。
またギターの音がすごいのです。対バンライブをするときの恁さんの足元は、画用紙に板チョコを2枚ぺたっと貼り付けたくらいのちいさな機材があるだけなのですが、今日はそれがもうちょっとした要塞みたいになっていて。
楽器や機材のことはお名前もなんにもわからないけれど、いつもは「ギュイーーン!!」な音が、この日は「ギュアラゴギグギュイイイイイン!!!」なのです。圧がすごいのです。
終盤
どの曲のあとだったか、柳さんがいったん下手へ捌ける瞬間がありました。恁さんがぽろんぽろんとギターを奏で、Hakuyaさんが優しくドラムを叩いて時間をそっと支えるもと、Regaさんがぽつぽつと思い出を語り始めます。
「俺と恁はもともと別のバンドだったんだけど」「恁から『Mr, Human Error』を聴かせてもらって」……あんまり記憶に自信がないのですが、Regaさんがこのバンドに触れたときのエピソードを語っていらっしゃいました。
そうして柳さんがふたたびステージに戻ってきたタイミングで「あとは頼んだ」と小さく肩を叩いてセンターへ送り出し、くるりと後ろを向いて汗を拭います。
柳さんが客席をみすえながら語るのは一年前の今、二年前の今、それからバンドを立ち上げた三年前の今。夢を追うことの大切さを説くメッセージへ、会場中が耳を傾けます。
「俺たちはこの曲から始まった」
最後の言葉が落ちたあと、すっ、と一呼吸を置いて告げられた曲名は『Answer』。音源化されていない初期の楽曲に、あちらこちらで小さな歓声があがります。
歌詞に散りばめられたバンドの軌跡を、聴き手にも惜しみなく手渡してくださるその姿勢に、またしても胸がぎゅっとします。旧体制のときからこの曲のベースラインがすごく好きだったのだけれど、Regaさんが弾くとこうなるんだなあ……と、感慨深くなりました。
そのあとは『barbarism』『炯眼、人を射る』と畳み掛け、この日のステージは終了。
しかし誰もその場から動こうとはせず、自然とアンコールが沸き起こりました。程なくして、どこかほっとしたような佇まいのメンバーさん達が、ふたたびステージに戻ってきます。
はじめはロングカーディガンを羽織っていた恁さんも、そのうちタンクトップになり、最後はもう上半身裸で吠えながらギターをかき鳴らしていました。とってもごきげんな恁さん。
アンコール
「アンコール何やる?本当に、今日はアンコールやるつもりなかったからさ、曲決めてないんだよね。何やる?何聴きたい?」
「ヒューマンエラー!」
会場からリクエストが飛ぶと、それを聞き間違えた柳さんが「やなな?」と自分のニックネームを答え、笑いを誘います。
「あ、ヒューマンエラーか!ヒューマンエラーは今日同期がないんだよなー。今日やった曲の中で」、そう返すとなりではRegaさんが「ちなみにこれが今日のセットリスト!」と、黒マジックで曲順の書かれた紙をかかげて見せます。
「ミラーミラー!」
「ミラーやる?じゃあミラーでいいけど、Hakuyaさん、ミラーいけますか?よし、じゃあ最後にもう一回それやって……今日終わろうぜ」
アンコールのHakuyaさんのドラムが、もうもうもう、ものすごく格好よくって。熱くて、力強くて、聴き手の背中をいきおいよく押してくれる音なのです。だけど叩いている本人に苦しそうな様子はまったくなく、口をおおきく開けて笑いながら、楽しそうに演奏されるのですよね。
ああ、本当に楽しかった……泣いて、笑って、へとへとになるほど汗をかいて。Regaさんと恁さんがドラムセットのところに足をかけて後ろ向きに演奏するのも、柳さんが恁さんをステージ下に落とそうとするのも、それをかたくなにこらえる恁さんも、ぜんぶ楽しかった。今までのライブで今日がいちばん。
イントロが鳴るたび、柳さんが歌い出すたびに驚喜して、誰も彼も一緒になって拳を突き上げる景色が、どんなにまぶしかったことか……とにかく今日は最高の一日でした。
懐かしい曲の衰えぬきらめきに触れ、新しい曲へまたいっそう期待をつのらせて、もうもうもうこの日のことはずっと忘れません。 メンバーさんもプレイアーさん達も、本当にありがとうございました。
ブレメスだいすき!
物販
ちなみにちなみに、物販では『[blind Circus.]』を購入しました。ケースを開いた瞬間、おもわず「わあ、かっこいい!」と声が出てしまうセンスのよさ。
- アーティスト: BLESS THIS MESS
- 出版社/メーカー: Starwave Records
- 発売日: 2018/07/04
- メディア: CD
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ジャケット裏のアーティスト写真、フォント、歌詞カード裏のアートワークやラストページのメッセージ、や……柳さん!これをずっと待ってたの!と叫びたくなるような、あまりにも痛々しい歌詞。とにかくすべてが格好よく、何度も手にとって開きたくなる作品でした。
曲の格好良さは言わずもがな、もう今回はすべて好みのど真ん中なのです。これからいっぱい聴き込みます。じっくり聴き込みます。たのしみです!
セットリスト
1.slumber
2.蝋涙に死す。
3.MIRROR MIRROR
4.Freak Show
5.PERSONA
6.old【new】order
7.[blind Circus.]
8.VENOM
9.Answer
10.barbarism
11.炯眼、人を射る。
EN. MIRROR MIRROR
公演情報
BLESS THIS MESS 60分限定無料ワンマン「[blind Circus.]」
恵比寿 club aim