good night dear

sleep like a baby

映画『セッション(2015)』感想

はじめに


遅ればせながら、2015年公開の映画『セッション』(原題:Whiplash)を観ました。きっかけは、アマゾンプライム。って書くとなんだかコマーシャルの宣伝文句みたいだけれど、たしか「星4つ以上の作品」カテゴリーにあったと思います。

わたしはあんまり映画に詳しくないので、この作品のことも、監督さんや役者さんたちのことも、はじめて知ることばかりでした。ビッグバンドでセッションをした経験なんてなければ、まともに楽器をならったこともありません。でも、そんなプロ素人なりに思うところがたくさんあったので、IT社長みたいにろくろをまわしながら語ってみます。

映画情報

英題:WHIPLASH
製作国:アメリ
公開年:2015
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
キャスト:マイルズ・テラー
    J・K・シモンズ

あらすじ


アンドリュー・ニーマンは、世界的なジャズ・ドラマーを目指して名門音楽大学へ入学した19歳。人付き合いの苦手な彼が、友だちも作らずひとりで練習に励んでいたところ、伝説の鬼教官テレンス・フレッチャーから声をかけられる。

異常なほど演奏の完璧さにこだわり、いちどダメだと判断したバンドメンバーは容赦なく切り捨てる。そんな彼のお眼鏡にかなったとあれば、ジャズドラマーとしての成功は保証されたようなもの。そう意気込むニーマンを待ち受けていたのは、あまりにも狂気的なレッスンだった。

ネタばれなし感想

愛かパワハラ

スパルタ鬼教官と教え子の確執を描いた作品。なぐる・どなる・椅子をぶん投げる、とありとあらゆる手段で生徒をしごいていきます。あまりにもその描写がアグレッシブなので、(この先生、そろそろモーニングスターを振り回すんじゃないかしら……)と、中世の武器を思い浮かべるなどしてしまいました。

ジャケット写真といい映像といい、この二人のまわりが真っ暗な演出がちらほらあります。夢を追うということは、まわりが見えなくなるくらい盲目的になりやすいってことなのかも。

そしてそして、音楽がとってもかっこいいのです。ジャズのジャの字も知らないわたしですが、本編で演奏される『Whiplash』と『キャラバン』って曲がずっと頭から離れません。

ウィップラッシュ

ウィップラッシュ

  • ハンク・レヴィ
  • サウンドトラック
  • ¥250
かっこいいなあ。こういう曲はどこへ行けば聴けるのでしょう?

ネタばれ有り感想

求道者の苦悩

自分の限界を乗り越えて、夢を追いかける……そんな人物を描いた作品に触れると、わたしは「よし!わたしもがんばろう!」と前向きな気持ちになることが多いです。ただ『セッション』の場合は、そうした感情はまったく沸き起こりませんでした。

いま、自分のなかにある感想は「夢と信念に取り憑かれた人間は、一生その呪縛から逃げられない」ということです。ニーマンの親戚がそうだったように、どれだけ周囲の人間が「安定した暮らし」の良さを説き、理想をバカにして鼻で笑おうとも、決意を打ち砕くことにはならないのでしょう。

それどころか、もしかすると余計に火がつくかもしれませんね。なにおう!見返してやらあ!って。それはもう本人が選んだ人生で、ある意味彼らは、ずっと孤独に生きるしかない。きっとひとつ目標を達成したら、その瞬間にもう過去の自分に不満が出てきて、もっともっとって新たな理想を求めてしまいそうだもの。

こう書くとなんだか悲劇的なようだけれど、それだけ何かに夢中になれる人生は、その覚悟は、とても魅力的だとも感じます。事実わたしは、夢と信念にとらわれた鬼教官フレッチャーにとっても興味しんしん。鑑賞してからというもの、日がな一日、この人物のことばかり考えているのです。

何がそこまで彼を駆り立てているのかしら。どうしてああまでも、スパルタな指導をするのかな。おおフレッチャー、どうしてあなたはフレッチャーなの。あたまの上に浮かんだクエスチョンマークはどんどん増えるばかり。

というわけで、ここからは鬼教官に焦点をあてていきます。

フレッチャーを知るための5エピソード

夢と信念にとらわれた生き方

作中で実年齢が語られることはありませんが、その風貌から察するに少なくとも50代以上のお年だと思います。

家族や友人との交流はほとんど描写されず、嗜好品や身だしなみにお金をかけている様子もありません。そんな人生こそがすばらしいというわけでは勿論ないのだけれど、果たしてこの人は夢のためにどれだけのものを犠牲にしてきたのだろう?と思えてなりませんでした。命を削ってでも夢をかなえようとする生きざまは、壮絶の一言に尽きます。

指導者のジレンマ

フレッチャーへ襲い掛かったことが原因で退学処分となったニーマンと、元教え子への行き過ぎた指導を密告されて辞職処分となったフレッチャー。二人はある日、ニューヨークのライブハウスで再会を果たします。学校を離れたその場所では、はじめてフレッチャーの本心が語られました。

実際、私の事などーー誰も理解してない。
学院で何を目指してたか。
誰でもできる。腕を振って拍子を取るだけなら。
私は皆を期待以上の所まで押し上げたかった。それこそが、絶対に必要なんだ。
でなきゃ現れない。次のサッチモも――チャーリー・パーカーも。『セッション』


フレッチャーが指導者として名門校の教壇に立っていたのは「次の天才ドラマーを生み出すため」だと語られています。その代表格としてチャーリー・パーカーの名前を挙げ、彼が挫折を乗り越えて成功したエピソードを続けました。

十代の彼はサックスの名手だが、ジャム・セッションでヘタを晒した。
ジョージーンズにシンバルを投げられ、笑われてステージを降りた。
その夜は泣きながら寝たが翌朝は?
練習に没頭した。来る日も来る日もひとつの誓いを胸に。二度と笑われまいと。
一年後、またリノ・クラブへ。
因縁のステージに立つと、史上最高のソロを聴かせた。

もしジョーンズが言ってたら?
”平気さ、チャーリー”、”大丈夫、上出来だ”。
チャーリーは満足、"そうか、上出来か"。
――"バード"は生まれていない。
私にしたらそれは究極の悲劇だ。『セッション』


「こういうたしかな事実があるからこそ、自分は苛烈な指導を徹底してきた」ということですよね。
気心の知れた仲間に囲まれ、ぬるま湯に浸かった状態では停滞してしまう。失敗したときにはとことん唇をかみしめて、期待と不安と、自分は無能な奴だという自己不信感を絶えず持っているくらいの方が、おおきく成長できる……そう言いたいのかな。

だが世の中甘くなった。
ジャズが死ぬわけだ。
明白だ。
カフェあたりで売ってる"ジャズ"のCDが証明してる。
英語で最も危険な言葉はこの2語だ。
"Good job.(上出来だ)"『セッション』


ここでニーマンが「でも一線がある。あなたはやりすぎて、次のチャーリーを挫折させたのでは?」と問いかけると、フレッチャーはすかさず「いいや。次のチャーリーは何があろうと挫折しない」と返します。

正直に言えば、育てられなかったんだ。
努力はした。
それこそ必死に、なみの教師にはできないほど。
それを謝罪する気はない。
必死の努力を。『セッション』


この言葉を聞いたとき、フレッチャーのジレンマが少し理解できたような気がしました。「自分の手で天才ドラマーを育てたい」という夢へ熱を注げば注ぐほど空回りして、ときには自分の手で教え子を壊してしまうこともある。当然、お互いに時間的な限りもある。そこには何か、信念にとらわれた者特有の苦しみがあるようにも感じました。

ただ、個人的にはどうしても、体罰を肯定する気にはなれません。フレッチャーの「目的を達成したい」情熱は理解できるのですが、そのために手段を正当化しようとしているように見えるんだもの。

にんげんがおおきなショックを受けたとき、それまでとはくらべものにならないような力が生まれる……というのは、よくわかります。失恋したり挫折を味わった人が、次の試合で良い結果を出すのって、よく聞くものね。

だからそういう意味では体罰も、手段としては合っているのかもしれません。

でもね、やっぱり暴れる力を行使するのは好ましくおもいません。うう、なんとかフレッチャーせんせいに漫画『翔太の寿司』をお届けできないかしら……親方が、カッとなって拳をふりあげようとする主人公をいさめる、とっても素敵なおはなしがあるのです。

「翔太!寿司職人の手は寿司を握るためのものであって、人を殴るためのものじゃない!」って。

というのは冗談半分にしても、フレッチャーのやり方はあきらかに常軌をいっしているとおもいます。

チャゼル監督の言葉

『セッション』の脚本も手掛けているデイミアン・チャゼル監督は、インタビューのなかでこう語っていました。

チャゼル監督:フレッチャーのようなキャラクターを創ったのは、(生徒が)素晴らしい演奏者になるために、どこまでやっていいのかというジレンマに焦点を当てたかったんだ。そこを強調するために、もっと怖くて意地悪なキャラクターにしたんだよ。ガジェット通信


また本作品は学生時代にドラムをやっていた監督ご自身の経験にもとづいているとのこと。スパルタ的な指導があまりにもつらすぎて、いまでも悪夢を見るくらいトラウマになっているそうです。

そういう嫌な思い出って大人になってもずっと後をひきますよね。

わたしも少なからず似た環境に身を置いていたので、監督のきもちがよくわかります。もし当時の恩師たちとマリオカートのネット対戦でばったり再会したら、積極的に赤甲羅をほうるくらいはするもの。いえ、むしろスタートと同時に「ヒャッハー!!会いたかったぜェェェ~~!!」とジープで逆走して、体当たりをするかも。

なんておふざけはさておき、『セッション』でも、行き過ぎた指導が生徒を追い詰める事件が描かれていました。それをあらわすのが、次のエピソードです。

ショーン・ケイシー事件

ある日の練習前、フレッチャーは「今日はまずCDを聴こう」と音楽プレイヤーの再生ボタンを押しました。そして涙ながらに、その曲の演奏者である元教え子ショーン・ケイシーが交通事故で亡くなったことを、団員たちへ聞かせます。後になって、この死は事故ではなく自殺だったこと、ショーンはフレッチャーの苛烈な指導を受けるうちに鬱病を患っていたことが明らかになります。

このシーンについて「どうしてあの鬼教官は涙を流したのか」「フレッチャーは同情を誘うためにウソ泣きをしたんじゃないのか」と、いろんな意見がかわされていました。

わたしは、あの涙の理由はいくつかあると考えています。まず「教え子を”死”という形でうしなった悲しみ」、次に「貴重な才能をうしなった悲しみ」、それから「自分の手で育て上げた天才を、結果的に自分の手で葬った悲しみ」。ここにも、夢と現実のはざまで「どうして?」と揺れる指導者のジレンマを感じます。

にせもの楽譜事件

それから、フレッチャーがニーマンに偽の楽譜を渡して恥をかかせた理由もまた、たくさん議論がかわされているみたいです。そのなかでもいちばん多かったのが「鬼教官は自分を辞職に追い込んだニーマンに復讐をしたかったから」というコメント。

うんうん、きっと自分の夢を邪魔したニーマンのことが許せなかったんじゃないかな。だからこそ自分のステージを乱してでも、その場にいたお客さんやバンドメンバーを動揺させてでも、彼から音楽人生を奪いたかったのかな?って。

そうかんがえると、フレッチャーはとっても独りよがりですね。とっても、とっても!自分からガールフレンドを誘っておきながら「君はおれの夢の邪魔になる」と一方的に別れを突き付けたニーマン君もなかなかのひとりよがりだけれど、鬼教官はそのさらに上をいくかんじがします。

ただ、それでもふしぎと、そんな生き方に人間くささを感じてしまうのです。

ラストシーンの見どころ

キャラバン

キャラバン

  • John Wasson
  • サウンドトラック
  • ¥250
ニーマンのあまりの激しいプレイでおおきく傾いたシンバルを、フレッチャー自ら元の角度になおすシーンで胸が熱くなりました。もともとは忌々しい復讐相手だったのに、口元に微笑みを浮かべてうっとりと酔いしれ、指揮をとる、その姿のなんて楽しそうなこと!

名門大学から離れた場所で、それも何の台本もなしにそうしたグルーブを体感しているというのが、なんだか皮肉めいているようにもかんじました。でも、もともと音楽ってそういうものなのかもしれませんね。

鑑賞したあと、ずっと余韻ののこる作品でした。今年のうちにまた観たいな。

20180719/BLESS THIS MESS@渋谷club asia

スタフェス感想

レーベル主催の大型イベント「スターウェーブフェス Vol.19」へ行ってきました。会場の「渋谷クラブエイジア」はむかしからある老舗のクラブだそうで、青色に染まった近未来的な空間がとってもおしゃれ。

見あげるほど高い天井や、カタカナのコの字みたいに両端が突きだしたステージ、いつもブレメスを観に行く「ライブハウス」とはまったく違う雰囲気が新鮮に感じられて、すごく刺激的でした。スタフェスがなければきっと一生縁のない場所だったでしょうから、うれしいです。

というわけで、今回も筆圧つよめの感想です。

対バンの印象

DAV

youtu.be 6月5日の池袋RUIDO K3ではじめて拝見したバンドさん。前回とおなじく、ピーッ!という笛の音にあわせて敬礼をする曲を披露されていました。やっぱりここのバンドさんの曲は、聴いているとちょっとどきりとさせられるものがあります。うまく説明できないのですが、仮面の下の素顔を見透かされているかんじなのです。

そしてブレメスのサポートドラムも務めてあるHakuyaさんの音が、とってもとってもかっこいい!後ろから背中を押されたり、腕をぐいっとステージに引っ張られたり、かと思えば急ブレーキをかけられたり。ものすごく音に感情を揺さぶられる感覚がします。
前回の感想はこちら。

Magistina Saga

youtu.be 3月28日のレーベルフェスで拝見したことのある、関西のバンドさん。そのときはボーカルのお姉さんがステージから落っこちてしまって、ちょっと心配でした。

このあいだレーベルに加入したL.A bateさんと仲良しみたい。関西組としていっしょに頑張ってる、ってMCがありました。こういうフェス型のイベントだと、ちょっとずつ知らないバンドさんを知ることができてうれしいです。

マジサガさんは今回はじめて二列目で観ることができたのですが、庵-iori-さん(Vo.)がステージの上手・下手の端っこぎりぎりまで来て、お客さんたちに声を届けるお姿がとっても印象に残っています。

振り付けがまったくわからなくても、導かれるまま手をあげていたらわくわくしました。ラップパートのある新曲がとくに。

La'veil MizeriA

youtu.be こちらも3月28日のレーベルフェスぶりに拝見したバンドさん。白塗りのお顔に派手な髪色と血濡れのお洋服、耳をつんざくようなシャウトの嵐、首が飛んでいきそうなほど髪を振り乱す悲絶奴隷さんたちの熱量。

ステージが終わるとボーカルさんは半ば駆け出す勢いでそうそうに下手へ引き上げてしまうし……そのあまりの迫力に、またしても圧倒されてしまいました。かっこいいなあ。

わたしはこのシーンの音楽をそんなによくは知らないのですが、「ヴィジュアル系」と聞いてぱっと思い浮かべるのが、こういうミザリアさんみたいなスタイルのバンドかもしれません。

一曲目の「なんとかの夢を見続けましょう~」みたいなサビの曲、とってもすきです。

ブレメスの感想

入場

youtu.be ステージを覆うまっくろな紗幕に各バンドのMVが映し出されるなか、「次、ブレメス観ときたい!」とフロアの前のほうにぞろぞろとお客さんたちが集まりはじめました。レーベル主催のフェスとあって、平日の昼間だということを感じさせないくらい、老若男女さまざまな顔がそろっています。

やがて会場が暗転すると、たちまち「来た!!」と期待の声が沸きおこり、それまで座っていたリスナーさんたちが一斉に立ち上がりました。

無数のメンバーコールが飛び交うなか、まずはオールバック風のヘアスタイルで決めた立石 恁さん(Gt.)、満面の笑みを浮かべるサポートドラムのHakuyaさん、どこか眼光の鋭いRegaさん(Ba.)。そして最後に、スカルメイクの柳さん(Vo.)が、ステージに足を踏み入れます。

この日3ステージ目となるHakuyaさんはドラムセットの奥から笑顔をのぞかせ、なにか「やってやるぞー!」といった佇まいで、スティックを握る右手を空高くつきあげていました。

1.蝋涙に死す。

蝋涙に死す。

蝋涙に死す。

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
その姿に導火線がちりちりと焦げ付くのを感じるなか、この日のライブは今月リリースされたばかりのミニアルバムより、新曲『蝋涙に死す。』でスタート。

「裁きをくれ!」と乞う柳さんの声に合わせて、開幕そうそうヘッドバンギングの嵐が巻き起こります。7月3日の無料ワンマンライブぶりに演奏されたこの曲は、ずっしりと重いラップパートに合わせて一斉にジャンプをする縦ノリの曲です。その途中には激しいシャウトを浴びながら高速ヘドバンをするところもあって、ここがまたすごく心地よいのですよね。

かと思えばクライマックスではとつぜん壮大なサビがやってきて、「死を待つよ……死を待つよ……」と、柳さんが一言一言を会場にしみ込ませるように、おなじフレーズを繰り返します。

このときバンドの低音を支えるRegaさんもまた、眉間にぐっと皺をきざみ、口を縦におおきく開いて、おなじフレーズを熱唱しているのが印象的でした。吠えている、といったほうがしっくり来るかもしれません。

もちろんその表情やたたずまいは、実際に歌詞を書いてうたっている柳さんとはまったく異なるもので。Regaさんにとっての「死を待つ」はどんな意味なんだろう?とすごく引き込まれてしまいました。 メンバーコールってこんなに聞こえるものなんですね。デスヴォイス気味のコール、かっこいい!

2.醜滅醜焉

醜滅醜焉

醜滅醜焉

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
続く『醜滅醜焉』では、「16回連続折りたたみ」で一斉に会場を揺らします。これがまた万年三等兵のわたしにはしんどく、あたまの上に体力ゲージがあったらずっと赤色のまんまだったとおもいます。

いつもなら”「醜滅醜焉絶望ワーオ!!」のシャウトにあわせてオーディエンスに中指を突き立てる恁さん”を拝見できるのだけれども、この日はとてもそんな余裕がなく、『進撃の巨人』のアルミンみたいに深刻な顔つきで、自分の体力のなさをかんがえるばかりでした。

そんな事情はさておき「煩悩なる醜滅醜焉……煩悩なる醜滅醜焉……煩悩なる醜滅醜焉……3,2,1ぎゃーお!」と柳さんが吠えるところがとってもおきにいり。それからチッチチッチ!チッチッチッチ!ってずっと不規則に鳴っている音もすき。(なんの楽器なのかな?まったくわかりません)

3.PERSONA

Persona

Persona

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
「ペルソナはワンマンだけじゃないぞ!」
「踊れるのはワンマンだけじゃないぞ!」

そんなニュアンスの言葉がセンターから放たれると同時、鳴り響くのはシャッフルナンバーの『PERSONA』です。「好きに踊ってくれ!!」との許しを眼前に、リスナーさんたちは体を揺らし、手のひらで手首を打ち、思い思いのまま音に身をゆだねていきます。

まさか対バンでこの曲が来るとはおもっていなかったので、いっきに体温が上がってしまいました。この曲が収録されているフルアルバムって2017年の12月20日リリースだったのですが、あれから半年以上聴いてもまだ、いっこうに飽きる気配がありません。ペルソナ、かっこいいなあ。

ダンサブルなメロディーが流れるなか、ぱっと曲調が変わって「Lost Venus……Lost Venus……」と攻撃的なシャウトが挟まれます。

その途中にいったんメロディがぴたっとお休みするところがあって、それまでずっと同じ流れできていた場の空気が、一瞬揺らぐのです。その絶妙なバランスがもうもうもう、だいすき。簡単には安心させてもらえない歯がゆさが、だけど不思議と癖になって、いつも陶酔しています。

4.old【new】order

Old (New) Order

Old (New) Order

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
最後はライブの定番曲『old【new】order』が流れ、ステージもフロアも一斉にジャンプ。
いつもは同期音源で柳さんのボーカルが重なっているのですが、この日は(たぶん)それがありませんでした。いつぞやにワンマンライブを観たプレイアーさんからそのようなリクエストがあったそうなので、それをふまえての演出なのかな?と思います。

時々ちょっと歌いにくそうにもみえたのだけれど……、うーん、実際のところはどうなのでしょう。普段の同期コーラスありだと柳さんの歌声や音の粒がぶわあっとひろがって華やかな感じ、なしだと声や楽器の音がはっきり際立つかんじがしました。

曲の終盤では、上手の恁さんがひときわ前に突き出しているステージまで歩み出て、軽快なステップを披露していました。それからセンターの柳さんに寄りそって、胸の高さでギターを寝かせて演奏する場面も、また忘れられません。柳さんがすこし腰をかがめてギターに語り掛けるようにして歌う姿が、ほほえましくもあって。

そうしたメンバー同士の掛け合いみたいなものを観るたび、ライブならではの生のたのしさを感じてうれしいです。

退場

『MIRROR MIRROR』がないのはちょっと意外でしたが、新旧織りまぜたセットリストが聴けたよろこびで胸がいっぱいになりました。と同時に、言いようのない寂しさを感じるライブでもありました。それはきっとわたしがもう、寂しくないときのライブを知ってしまっているからだとおもいます。

いつか叶うなら、もう一度ここのライブハウスでブレメスを観たいな。柳さんと恁さんとRegaさんとHakuyaさん、みんなで音をたのしんでみんなで演奏しているステージをもう一度ここで観たいなあ。

プレイアーさん、他バンドのリスナーさん、そしてメンバーさん、ありがとうございました。
Jewel☆NeigeちゃんのCDも、うれしい……!です。みなさん本当にやさしくて……これからじっくり聴きますね!

ミニパンフレット

レーベルさんのオンライン限定で販売されていたプレミアムチケットの購入特典で、ミニパンフレットをいただきました。内容は、オムニバスDVDの収録曲紹介です。

ブレメスのページでは、柳さんが『MIRROR MIRROR』について書いていらっしゃいました。
そこで語られていたのは、この曲がBLESS THIS MESSからの強烈なラブソングだということ。そして、曲の終盤にある「キミの夢さえ僕が笑おう」がもっとも大切な一節にあたるということです。

ここのフレーズはわたしも惹かれていて、聴いても口ずさんでも、自分を奮い立たせるお守りのようにかんじています。それは柳さんの紡ぐ言葉や歌メロ、力強い歌い方が大きな理由なのですが、とりわけライブで聴くときには、そこにいたるまでの流れもすてきなのですよね。

目まぐるしいスピードで展開していく疾走感たっぷりの曲調、ぎゅいんぎゅいん歪みまくってうねる恁さんのギターソロ、あちー!!と唇を真横いっぱいに広げて笑いながら、全身全霊で低音をとどろかせるRegaさんのベース。そんなRegaさんとときどき視線を合わせながらずっと気持ちよさを保ちつづけるHakuyaさんのドラム。

すべてが絡み合った先にあのDメロ(かな?)が落とされたとき、いつも自然と笑顔になって、片手を高く突きあげてしまいます。

はじめてこの曲がお披露目となった5月10日の高田馬場エリアも、バンド初のハシゴライブが敢行された6月5日のツーステージ目も、このあいだのワンマンのアンコールも、『MIRROR MIRROR』を聴いてまた明日からがんばろう!ってエネルギーをいただいてきました。

だから、って言葉で文章をつなぐのはおかしいかもしれないけれど、次のライブもとってもたのしみです。

8月7日の池袋エッジ、E.Tさん主催イベント。 今までになかった雰囲気の対バンさんたちにわくわくが止まらず、ぜんぶのバンドさんのMVや映像を食い入るように観てしまいました。とってもカッコよさそう。 お客さんたちがライブでサークルモッシュやウォールオブデスをしている動画もあったから、かなり激しめなのかな?どきどき。

きっとこの日、ブレメスは今日以上のかっこいいお姿を見せてくださるだろうから、それを心待ちにしています。

セットリスト

1.蝋涙に死す。
2.醜滅醜焉
3.PERSONA
4.old【new】order

公演情報

[Starwave Fest Vol.19〜オムニバスDVD発売記念ライブ〜]
Starwave Records presents
OPEN 14:30 / START 15:00
出演:FIXER/未完成アリス/Scarlet Valse/ラヴェーゼ/La'veil MizeriA/THE SOUND BEE HD/UNDER FALL JUSTICE/BLESS THIS MESS/Magistina Saga/DAV

BLESS THIS MESS 1st EP『[blind Circus.]』感想

blind Circus.

blind Circus.

2018年7月4日にリリースされたBLESS THIS MESSのミニ・アルバム『[blind Circus.]』を聴きました。ライブやCDの感想をブログに書きしるす文化はもうとっくのむかしに廃れているそうですが、わたしはインターネッツ老人会なので、どんどん書いていきます。

ブレメス新譜の印象

最高!
もうもうもう、その一言に尽きます。
2017年12月20日にリリースされた前作『XIALL RAIN』の収録曲『PERSONA』をはじめて聴いたときのときめきが、それを上回るかたちで押し寄せてきました。

Persona

Persona

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
退廃的な夜を匂わせる大人のロック、色気と暴力性、媚びのない音の質感はそのまま引き継がれて、ますます広がりをもったように感じます。

作曲は今回も、柳さん(Vo.)と立石 恁さん(Gt.)。『PERSONA』の作曲者である恁さんの曲は、クラブミュージックっぽい要素を取り入れたお洒落な雰囲気です。

そこに柳さんのキャッチーな歌メロや、意味性と語感のからみあう歌詞、深みのある低音ボーカルが乗ると、たちまち「BLESS THIS MESS」ってジャンルになる気がします。どこのバンドとも例えるのが難しいそのオリジナルな曲調に、すっかり魅了されてしまいました。

1.蝋涙に死す。

蝋涙に死す。

蝋涙に死す。

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
はじめてイントロを聴いたとき「まさかブレメスでこんな曲が聴けるなんて!」と一瞬でこころを奪われた曲。ただひたすらに格好いい〜!です。

今までのブレメスにはまったくなかった新鮮な曲、なのだけれど随所に感じる柳さんのテイスト。ラップパートではついつい「イライライライラ〜♪」といっしょに口ずさんでしまいます。

もう胸は痛まない
振り出しに戻らない
目を閉じ見ないフリなんてできないや


この力強いフレーズが大好きです。柳さん自身の言葉なのだろうけれど、自分を勇気づけるおまじないにもなるのですよね。

曲はお洒落なミドルテンポですすみ、焦らして焦らしてとことん焦らして、やっとラストでサビが来ます。そのもどかしさが、とてもとてもとても好きです。

蝋燭が泣いている 死せる灯火に
自分を重ねて 重ねて 重ねて
死を待つよ……


ラストではこの「死を待つよ」がずーーっと繰り返されるのですよね。わたしは「死を待つ」という行為がイコール前向きな、自発的な姿勢と結びつかなかったから、はじめはちょっと違和感がありました。

そしたら、それは「(何も行動を起こさずにただ漠然とその場に立って)死を待つよ」なのだと、頭から信じきっていたことに気づいたのですよね。

だんだんと高さの減ってゆく蝋燭に自分の余生を重ねて、投げやりになっているのかな?って、単語のイメージだけですっかり思い込んでいたみたい。

歌詞が肌になじんできたいまでは、「死を待つよ」は、「いつかは必ず死が訪れる、その結末は抗わずに受け入れる。そのうえで今を生きるよ」ってメッセージとして、受け取るようになりました。そうしたらますます、この曲が好きになったのです。

2.MIRROR MIRROR

MIRROR MIRROR

MIRROR MIRROR

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
通称ミラミラ、新章ブレメスの名刺!
ライブではじめてフルを聴いたときは、あのスピード感に全くついていけなくてすごく振り回されたのを覚えています。とりわけ曲の始まり方がなかなか覚えられなくて、いつも気付いたときにはBメロ辺りまで進んでいたのですよね。

だからいつも「な、何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった……」ってJOJOポルナレフ状態だったのをおぼえています。

でもMVのフルバージョンが公開されてしっかり曲の展開をおぼえたあとだと、今度はイントロのデデッデデデデデーンデン!のときに「もしかしてミラミラですかァァーーッ!?」と心のスタンドが喜びはじめたのです。最後まで保たれつづけるスピード感が、逆に心地よくてたまらなくなりました。

この曲がセットリストに入っている日のライブは、わくわくが止まりません。最初からトップギアで走り出す音色を追いかけていると、いつも笑顔になれます。

そして何より「約束を今しよう。キミの夢さえ僕が笑おう」、ギターソロ明けのこの力強いメッセージは何度聴いても胸が締めつけられます。ステージ上から聴き手の領域までぐっと踏み込んで「自分が音楽で何をもたらすのか」伝えてくださっているような、そんな心地がするのです。

終盤のこの歌詞が大好き。はっきりと言い切ってくださるところに、柳さんがフロントマンとして歌を届け続けようとする「覚悟や勇気」を感じられて、とっても感激しました。

3.[blind Circus.]

blind Circus.

blind Circus.

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
スポットとフルでいちばん印象の変わった曲。化粧品のコマーシャルに使用されそうな華やかでまばゆい曲だと思っていたら、まったくそんなことはなく、柳さんは口から毒霧を噴射していました。

某月某日で 存在本能停止した
可愛いなんてもう呆れちゃうな


のっけからこんな歌詞に始まり……

I don't know what to do.
go fuck yourself.


(泡をふいて倒れる音)

あなたが持つ価値観に苛々を
砂で固めた言葉を 水で薄める事できない


と、と、とってもかっこいい〜!!
毒やなぎさん……と、と、とてもよいです。 はじめて歌詞を知ったとき、なんだかもうするどい刃物で胸を斜めにかっ割かれた心地がして、とにかく衝撃的でした。

この曲は歌詞のなかで「あなた」と「キミ」へ宛てるフレーズがあります。

「キミ」と「あなた」の使い分けはどういう基準でされているのかな。 どちらも不特定多数に向けて呼びかけているように感じたのだけれど、なにか思うところがあるときは「あなた」とちょっと距離のある呼び方をして、わざと突き放しているのかな?

ともかくともかく、終盤のここがいっとう好きです。

盲目のこのサマ 僕をこのまま 受け入れたの?
目の前で立ち尽くすキミに幸せあれ


「目の前で立ち尽くすキミに幸せあれ」って、メロも言葉のひびきも最高ですね。ついつい口ずさみたくなっちゃう。

曲調に関しては縦ノリなところがあったり、ライブだと恁さんのコーラスがあったり、アルバムのなかでも特別お気に入り。最初の英詞あとに来る音は、あまりの色っぽさに胸がぎゅっとなります。「I don't know what to do. go fuck yourself.(ジャーン!!)」

それから間奏の「プルルップルルッ」「わっちゅっちゅー」と鳴ってるワブルベースもたまりません。

ワブルベース……そんなお名前なんですね。みんな知っている言葉なのかな?もしや。わたしはずっと「カレーパンに取っ手が生えたみたいな形のまんまる光線銃で、よわい宇宙人を撃つときの音」って説明していたのだけれど、どなたにも、まったく、ぜんぜん、伝わらなくって。

新木場へよく踊りに行く女の子に「カレーパンのまんまる光線銃の〜」と質問していたときも、「次言ったらこれやぞ」って目の前にグーパンチを突き出されたのです。これからは物知り顔でワブルベースとかダブステップって言ってみよう。

4.Lost Sphear

Lost Sphear

Lost Sphear

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
アルバムのなかでひとつだけ異質な雰囲気のある不思議な曲。前曲の『blind Circus.』からとつぜん音数が減って、ひろい空間へぽいっと放り出された感覚になります。

チャイムのような甲高い音がちらちら鳴るもと、柳さんの語りや歌声がぼわぼわぼわーん……と反響して聴こえる、宇宙的な世界。

どこへ流れ着くのかもわからず、元の場所へ戻れるのかもわからず、ただひたすらその場所をさまようみたいな浮遊感。そんな心地になる曲です。

スポット動画を拝見したときは、宇宙や異次元空間のなかに伸びる長い道を歩き続けるイメージでした。フルバージョンを聴くと今度は、チャイムめいた音に女性性をつよく感じるようになりました。

絶対的な力でわたしを優しく包み込み、ときに支配し、愛で傷つけるもの。それをメンバーさんへお伝えするなかで「マザー何とかみたいな名前のとってもおおきな敵、その世界を創った女神さま」と表現したことがあります。

それでこの曲をリピートしながらうたた寝をしたとき、おかあさんに名前を呼ばれた気がして、飛び起きたことがあるんですね。瞬間、強制的に子どものときのまっさらな自分に戻らされてしまって、ちょっと困ったのでした。

やっぱり普段はいろんな仮面を身に付けないと生活ができないから、そういう意味でこの曲は、なかなか聴けずにスキップすることもあります。好きとかきらいとか、単純な一言で語るのはむずかしいです。

5.VENOM

VENOM

VENOM

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
やなぎテイスト大炸裂!のハードロックな曲。トレイラーの段階ですぐにピンときたくらい、頭から終わりまでひたすら柳さんを味わえる一曲でした。

はじめてライブで聴いたときは、まったく音の波をつかまえられなくて、ちょっぴり悔しい思いをしました。ブレメスの楽曲は全体的にそうなのだけれど、初見で音の波をつかまえるのがものすごくむずかしく感じます。

わたしはその何が起きるかわからない未知数なところに惚れ込んでいるのですが、これがこと「ライブでノリを体感する」となると、なかなか大変。いかんせん横ノリジャンルがホームなので、縦ノリの、とくにこの界隈では手持ちの弾がなさすぎて……。

たとえるなら長縄跳びの感覚なのです。縄のなかに入ろうとタイミングをはかるのだけれど、その場からいっぽも動くことができない悔しさ。入りたくても入れない、圧倒的大敗……ッ!ううう。

でも、いったんその体験をしたからこそ、ある意味では、太いくさびを胸に打ち込まれた曲ともなりました。

そうして全体の流れを把握できてからのぞんだ二度目のライブでは、これがものすごくわくわくして。「……すごい!すごい!ココもココもココも進研ゼミでやったところだぞ!」なドキドキ感で、間奏のモッシュタイムや拳を突きあげる時間は、とっても楽しかったのです。

体力をすべて奪いに来るようなハードチューンだからへとへとになるけれど、これからどんな風にライブへ色を添えていくのか気になります。

さぁ、 愚かしい この僕を笑ってよ
さぁ、 もどかしい この夢を笑ってよ
さぁ、 疎ましい この僕を笑ってよ
さぁ、 毒のまま 悲劇だと語ってよ


この部分は柳さんなりのラブレター、愛の告白なのかなと感じました。

不特定多数の視線を浴びながら表舞台に立って、盲目的に夢を追いかける。そんなすがたを見ていてほしい、見守っていてほしい。そして「キミの夢さえ僕が笑おう」と、リスナーの未来もまた見つめていたい。

ステージ上とフロアとで、お互いの視線がまじり合う関係性というんでしょうか。勝手にそんなふうに解釈したら、一方的に「見られる側」「見る側」とならない関係性のあたたかさが、とっても嬉しかったです。

アートワーク

そんな風に感じられたのは、ジャケットや歌詞カード・円盤のヴィジュアル面の影響も、ものすごく大きいのですよね。なので、前作に引き続きデザインを手がけているRegaさん(Ba.)のセンスには、やっぱりしびれてしまいます。

CDの円盤もジャケットと同じ瞳のデザインなのですが、まんなかの穴が開いている部分がちょうど瞳孔のように見えるのがたまりません。

この他にも、ジャケットの表面でコンセプトを示して裏面はアーティスト写真なところ、視線がぶれない左揃えのレイアウト。フォントサイズや明朝体系の落ち着いた書体などなど、とにかく好きなところがいっぱいです。

とりわけフォントの視覚的効果については、特典の楽曲解説CD(Regaさんver.)で触れてあったので、そ……そのおはなしもっと聴かせてください!って、ちょっと前のめりになっちゃった。バンドのなかでの立ち位置とか、なかなか普段聞けないおはなしがあったのもすてきでした。

またひとつ、お気に入りのアルバムが手元に増えて感謝しかありません。トレイラーの公開からずっと待っていたかいがありました。

嬉しいなあ。嬉しいなあ。これからもっともっと、たくさん聴きたいです。

20180703/BLESS THIS MESS@恵比寿 club aim

はじめに

BLESS THIS MESSのプレミアムライブ&ファンミーティングへ参加してきました。

この日は恵比寿club aimで60分限定の無料ワンマンライブが開催され、その事前に有料の特別イベントが別途用意されたのです。もうもうもうとにかく笑い声の絶えないアットホームな空間で、ファンごころをくすぐる演出がたくさんありました。

無料ライブ本編のレポートはこちら。 というわけで、今回も筆圧つよめの感想です。

恁さんアコースティックライブ

開演を少し押した16時過ぎ。集まったファンの方々とおはなししていると、不意にステージ向かって下手側から「こんばんは~」と立石 恁さん(Gt.)が歩いてきました。前髪をオールバック風に編み込んだヘアスタイルで、目の周りを黒くかこんだ攻撃態勢ばっちりの姿、ではあるもののその雰囲気はのんびりとしたもの。

てっきり事前の準備かなにかにいらしたのかな、と思っていたら、よいしょ、とステージ中央に置かれた椅子に座るのです。よく見れば、その前には譜面台……ああっそれから見慣れないおおきなギターも。

なんと、もうこのときから恁さんのセクションは始まっていたのです。お隣のお客さんと「エッ」と動揺のカタカナを発し、「はじまった……」「ゆるくはじまった……」と思わず語り部になってしまいました。

そんなわけでふわっと開始した、恁さんによるアコースティックライブ。ご自身が作曲されたライブの定番曲『old 【new】order』を弾き語りで聴かせてくださる、とっても贅沢な企画です。

Old (New) Order

Old (New) Order

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
原曲はキラキラEDM系のクラブミュージック……な印象があったので、いったいどんな風になるのかなあ?と、胸が高鳴りました。

あたたかみのあるギターの音がじゃかじゃかと響き、そこに恁さんの歌声が乗っていきます。この間はじめて『[blind Circus.]』のコーラスを聴けたときに「スモーキーな声」と表現したのだけれど、やっぱり優しいお声をされているなあというのが最初の印象です。

ちょっとかすれて、気だるげで、とってもほっとする歌声。よく恁さんのツイキャスに「癒される」とか「癒しボイス」とコメントがつくのも納得です。開放感たっぷりのシンセサウンドやドラムが心地いい原曲とはまた違った、気持ちの内側にすっと染みいるような表現に、すっかり聴き入ってしまいました。

「この後はヤナが歌うからね~」だったか、終わるときもふわっとしています。もう頭から最後まで完全に恁さんの空気感なのですよね。ここから続く柳さん、Regaさんもそうなのですが、それぞれの個性がものすごく出ているイベントだったのです。

柳さんアコースティックライブ

二番手の柳さん(Vo.)はというと、ステージに現れてそうそう「すいません、マイクがないです!」とトラブル発生。この、必要なものがその場所にない、というのがもうすでに柳さんのターンという感じがしました。

柳さんのセクションは、琴の生演奏とピアノの同期に合わせて歌うというもの。ううう、これもまた本当にぜいたくな時間だと思います。まず一曲目はファーストフルアルバム『Xiall Rain』より『悲恋蜉蝣』、それから『Lunar Regret』が選曲されました。

悲恋蜉蝣

悲恋蜉蝣

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
Lunar Regret

Lunar Regret

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
これがまた、本当にすばらしい歌声なのです。よくアーティストさんや歌手の方にたいして「CDそのまんまの声」「喉からCD音源」なんてたとえ方がされるけれど、柳さんはその一段階上、生で聴いた方がはるかに良いと感じます。それは決してCDがよくないということではなく、生が良すぎるのですよね。

「離れかけたのに、繋ぎ止めた愛を……」と最初のフレーズを歌いだした瞬間もう、頬がゆるみきってしまって。右ほっぺも左ほっぺも、うちがわに戻ってこないのです。ちょっと一回おくちを閉じましょうと宿主が命じるのですが、いやそれは断る、俺たちほっぺさんサイドにも言い分がある、といっかんして拒否の姿勢で。

ともかく、とてもとても素敵な時間でした。それだけに二曲目がトラブルで中断してしまったのは、ちょっぴり残念。でもそれも「柳クオリティ」なのかもしれません。

レガトーーーク

残るはRegaさん(Ba.)が司会役をつとめるファンミーティング。いったい何をするのかな?と終始、あたまの上にはてなマークが浮かんでいました。

ファンの集いのような催しは、ファミコン界のレジェンド・毛利名人レトロゲームイベントにしか参加したことがないのです。音楽関係、ましてやヴィジュアル系のジャンルともなると、この日が本当の初体験。

瞬間、とつぜん陽気な洋楽BGMが流れだしました。「マイーマイーアイーヤイー……フー!!」でおなじみのこの曲は、ザ・ナックの『マイ・シャローナ』。あれ?これってなんの番組の曲だったかしら……記憶を辿ろうとしたその矢先、「はい、どーもー!!!!」なノリでRegaさんが入場してきたのです。

赤いストライプ柄のジャケットに真っ赤な超ネクタイを結んだその姿は、まさしくベタな芸人さん風の衣装で、さっきまでのしっとりとした雰囲気との高低差にどっと客席がわきます。もうここからずっと笑っちゃった。

「僕たちはブレメス大好き芸人です!みなさんもブレメス大好き芸人ですよね!?」と語るRegaさんいわく、要はTBSの人気バラエティ『アメトーク』みたいなテイストでメンバーの紹介をするというもの。しっかりフリップも作ってきていて、たぶんひな壇芸人のポジションなのだと思います。

恁さんと柳さんはそれぞれ上手と下手に立ち、Regaさんのプレゼンにひとつひとつ反応するポジション。本家アメトークでいうところの、宮迫さんと蛍原さんみたいな。でも今日はブレメスだから、レガトークかな?

ブレメス紹介

BLESS THIS MESSを形成するメンバー陣のパート紹介。今まで結構たくさんライブに通っていたはずなのに、わたしはものすごい勘違いをしていたみたい。柳さんはボーカル、恁さんはギター。Regaさんは釣りだそうです。パートは釣り。ベースのベの字も出てきませんでした。

メンバー紹介

それから、各メンバーの紹介がはじまります。柳さんに対しては「ラインの通話が長い、二時間をこえる。彼女か!!」と、のっけから痛烈なひとこと。横から恁さんも「スカイプだと6時間くらい話してる」とすかさずマイクを手にします。

それで思い出したのだけれど、前に恁さんからも同じようなことを言われていたなあって。

今年の4月くらいだったか、柳さんと恁さんがツイキャスのコラボ配信をしたときに、お二人が年末に大喧嘩をしたというエピソードが語っていらしたのですね。

それはお互いがバンドを高めていくために必要なぶつかり合いだった、とのこと。たしかに作品と真剣に向き合うクリエイターが集まれば、かならず衝突しあいますよね。きっとそれぞれに譲れないこだわりがあるでしょうから。

そんなこんなでしばらく冷戦状態が続いていたときの柳さんの不満が、「ケンカ中でもラインに絵文字を使ってほしい」というものだったのです。もう、この字面の平和さがたまりません。

「恁くん、あれいちばんだめだよ!俺、超傷ついちゃうんだからさぁ!」
「俺はヤナの彼女じゃない」
「じゃあキミが付き合ってる相手からさ、いきなり絵文字なしのラインが来たらどーーー思うの?こっちが話しかけて、はいわかりましたっていきなり絵文字なしの敬語で来たら、ねぇどうよ??どうなのそれ!!」
「俺は彼女かっ」
「俺たち群馬と東京の遠距離恋愛なんだからさ、B'zのバッドコミュニケーショーン♪はダメだよ!」

柳さんが必死に主張して、恁さんが冷静にツッコミをいれる。このあまりの熱量の差が微笑ましくって、笑ってしまったのを覚えています。こうして書き起こしてみると、むしろ柳さんが「彼女」側かも。

プレイアーからの質問

続くコーナーでは、あらかじめ回収したアンケートからどんどんクエスチョンが拾われます。

メンバーの可愛いところを言い合う流れでは、Regaさんが恁さんを「お前は可愛いと思われたいのが透けて見えるからダメだ」とばっさり、その無慈悲な返し方に笑ってしまいました。片手に持った〇✕札から、ブーッ♪と不正解の音を鳴らして。

だけど「オカマみたいなスタンプを使って」なんて言われても、恁さんは恁さんで「あれはたしかにな~」と気ままな感じ。

もうとにかくRegaさんの切れ味がするどくて、するどくて。ちょっと間違えたらケンカを売ってると思われそうなくらい、アタリが強いのですよね。

でもそういうのってお互いに全幅の信頼を置いているからこそできるもので、もちろん相手を見ているからこその愛が感じられて、だからとっても楽しかったなあ。メンバーさんたちの絆を目の当たりにできて、すごく楽しかった〜のです。

曲のノリ方おさらい

続くコーナーでは、これもまたあらかじめ回収したアンケートから意見をひろい、実際に演奏しながら振りつけを決めていきました。このときには裏で控えていたサポートドラムのHakuyaさんもスタンバイし、メンバーさん達の生演奏に合わせてライブのノリを再現していきます。

とりわけ印象的だったのはエッジの立ったロックナンバー『VENOM』です。

VENOM

VENOM

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
「さぁ、愚かしいこの僕を笑ってよ」から続く部分のノリがまったく決まらなくて。そしたらRegaさんが「これは?」と、カニ歩きみたいに左右にステップを踏む仕草を冗談めかせて提案したのですね。

原曲だとものすごくダークに攻めていく雰囲気が、横ステップを踏むだけでたちまち「さぁ、愚かしいこの僕に〜〜〜笑ってYO☆」と変わって聴こえます。

そのなんともいいがたい野暮ったさ……に客席からくすくすと笑い声が上がる中、しかし柳さんがまさかの「じゃあ、とりあえず今日のところはそれで」と素直に受け入れてしまったのです。

瞬間、Regaさんが血相を変えて「やめて!!だめだめだめ!!絶対やめて!!」と全力阻止していて、これにはもうお腹がいたくなるくらい笑ってしまいました。「えっダメ?これダサい?」「俺は止めてほしかったんだよ!」と二人が掛け合いをする後ろで、Hakuyaさんもまた響かんばかりの声で大爆笑。

せっかくの限定イベントだからそのすべてを公開することはしないけれど、とにかく最初から最後まで大満足な時間でした。Regaさんの「俺はDir en greyみたいなノリがやりたいんだよ!」からのワンフレーズ熱唱(ちょっと京さんみたい。笑)なんて、普段のステージでは絶対に味わえないもの。

またこんな風にRegaさん進行のイベントが開催されたらいいなあ。ただ三人で座談会みたいにお話しするだけでも、ボードゲームを囲むだけでも、それだけで成立しそうな気がします。バンドの垣根をこえて、交流のあるみなさんで集まるのもおもしろそう。

メンバーさん達もプレイアーさん達もニコニコしていて、とってもとってもとっても楽しかったです。ブレメスへの気持ちがまたいっそう深まるのを感じるなか、この日のイベントは幕を閉じました。

セットリスト

1.old 【new】order
2.悲恋蜉蝣
3.Lunar Regret

公演情報

2018年7月3日(火)恵比寿club aim
BLESS THIS MESS 60分限定無料ワンマン「blind Circus.」
Starwave Records presents
OPEN 18:00 / START 18:30
※プレミアムチケット特典:本編前にメンバー3人とお客様とのライブミーティング・琴の生演奏ライブを行います。(16:00〜予定)

20180703/BLESS THIS MESS@恵比寿 club aim

ブレメス感想

BLESS THIS MESSのワンマンライブへ行ってきました。

この日は「60分間限定無料ライブ」とめいうたれた本編と、プレミアムチケットを購入したひと限定のイベントの二本立て。まずは100点満点中53億点だった、本編のステージについて印象を書き記したいとおもいます。

というわけで、下書きなしの感想です。あとで読み返したらとっても恥ずかしくなっちゃいそうだけれど、いまの感情のまま書いてみますね。 harutsugedolly.hatenablog.com プレミアムライブの感想はこちらからどうぞ。

序盤

はやく始まってほしい気持ちと、この日が終わってほしくない気持ち。複雑な感情が入り乱れるなか、ステージを覆う黒幕が、ザッと真下に落ちました。「BLESS THIS MESS」と白抜き文字の記された黒地のドロップアウトをバックに背負う舞台上、まずはいつものとおり立石 恁さん(Gt.)とサポートドラムのHakuyaさん、Regaさん(Ba.)が続々と入場してきます。

最後に足を踏み入れた柳さん(Vo.)がセンターに立つと、この日最初に静寂を切り裂いたのは、泉の底から水が湧きあがるような美しいメロディーでした。

ずっとこのバンドを応援しているリスナーさんなら、いえ、きっとはじめて耳にする方でも反応せずにはいられない、もの悲しい音色。ながらく姿をひそめていた初期の名曲『slumber』、そのバラードによる幕開けに、たちまち会場内の空気が湿り気を帯びていきます。

両手で口をおさえる人、鼻をすする人、そうした景色がひろがる中、わたしもまた、ふかく俯きました。少しでも気を抜くと嗚咽が漏れてしまいそうで、肩を震わせてこらえるしかなかったのです。

この曲は、まだバンドが「Starwave Records」のレーベルに所属する前の時代に生まれたもの。柳さんが「今でも支えてくれるすべての人たちへ、遺作のつもりで」つくったファーストフルアルバム『Hymn』の収録曲です。

一年前、二年前のワンマンライブではかならず披露されるほどの人気があり、その度に会場を涙の色に濡らしていました。

そんな『slumber』を最後に生で聴いたのは、2017年の5月28日、前メンバーの蘭丸さん(Gt.)と駁さん(Ba.)が脱退したワンマンライブの日です。

終演後のドリンクカウンターで、当時のファンの人たちと話したことが、ふとまぶたの裏に浮かびます。「ねえ、これから誰がslumber弾くのかな」と切り出し、「誰が弾けるのかしら」と言い直したあの夜。ややあって「ジンしかいないでしょ」と、柳さんの親友の名前が返ってきた、あの夜。

そうだよね、と声を揃えながらも、とうぜんファンは何も干渉できず、ただ次の活動を願うしかなかったこと。その中でそれぞれが、別れの傷口を塞いでいくしかなかったこと。バンドの再始動と恁さんの加入が発表されて、柳さんにファンメールを送ったこと。

そこからやっとなのです。やっと、本当にやっと、今のブレメスの『slumber』を聴けた。もうもうもう、感無量なのです。

曲の前半部分にはほとんど演奏の聞こえない静けさが流れ、たとえるなら柳さんの独白めいた時間がつづきます。それが「この眠りに沈めて……この眠りに沈めて……」と悲痛なねがいを吐き出したその瞬間、それまで息をひそめていた楽器隊が一気に呼吸をして、音を鳴らすのです。

唇をきゅっと引き結び、からだいっぱいを使ってドラムを打ち鳴らすHakuyaさん。しっかと地面を踏みしめ、低音でバンドを底から押し上げるRegaさん。眉間に葉脈のような深い皺をきざみ、ギターの弦をかき鳴らす恁さん。

全員がフロントマンに寄り添い、支える、そのバンド感に、どうしても涙が止まりませんでした。報われた、浄化された、救われた、この気持ちをなんと表現したらいいのかわかりません。

ただ、ずっと応援してきてよかった。これからも応援したい。その気持ちがますます強まった瞬間でした。

中盤

やがてふたたび静寂へ近づくにつれ、柳さんはゆっくりと片手を胸に添え、仰々しい一礼をしてみせます。

ブレメスの活動初期を飾って色褪せない名曲の余韻だけがのこる中、しかし今度はカルティックな『蝋涙に死す。』が容赦なく叩きおとされ、会場を狂信的ないろ一色に塗り替えました。

蝋涙に死す。

蝋涙に死す。

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
「裁きをくれ……!!」と乞う柳さんの前にひろがるのは、対象者を見定めるようにゆらりと軌跡を残しながら揺れる、無数のヘッドバンギングです。ここから一瞬にして、狂騒の火蓋が切り落とされます。

疾走感を保ちつづけて駆ける『MIRROR MIRROR』、攻撃的なラップが炸裂する『Freak Show』と畳み掛けるそのあいまには、柳さんがフロアへ語りかけるひと幕もありました。

「やなぎやなぎやなぎーーーッ!!」
「じんじんじんじーーーん!!」
「れがれがれがーーーッ!!」
「はくやーーーッ!!はくやはくやーーーッ!!」

柵から身を乗り出してでもメンバーを求める声が鳴り止まないなか、ようやく柳さんが口を開きます。

「俺、今日、すげー楽しいよ。ライブがすげー楽しいよ!」
こうした心からの言葉は、公演中、何度も何度も聞かれました。

「好きに踊ってくれ!!」その声をきっかけにキャバレークラブの管楽器めいた音色が鳴りひびき、ダンスミュージック『PERSONA』の登場。またしても久しぶりとなる人気曲にリスナーさんたちは歓喜のどよめきをあげ、一斉に両手をあげて自由にからだを揺らします。
Persona

Persona

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥200
「Lost Venus……」と繰り返す声がしだいに攻撃的なシャウトへ変わるに合わせ、こちらも休みなしの高速折りたたみで応戦。恁さんはギターをかき鳴らしながらも、軽快な足さばきでダンスステップを踏み、フロアのボルテージはいよいよ増すばかり。

そうして新旧織り交ぜた曲がつづく中盤戦、今度は翌日リリースのミニアルバムより、表題曲『[blind Circus.]』が演奏されます。
blind Circus.

blind Circus.

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
前回いちはやく先行を聴いたときにもかんじたのだけれど、やっぱりこの曲の間奏はものすごくかっこいいのです。楽器隊の音が奈落の底からせり上がってくるような迫力で、無我夢中になって髪を振り乱しながら、音の世界に心酔してしまいます。

途中、ベースとギターがものすごく色っぽいところがあって、どの部分なのか、はやくCDを聴いて確認しなくちゃという気持ちに駆られています。

この「色気」というのは、新章ブレメスをあらわすひとつのキーワードなのかなと思っていて。ブレメスはどのメンバーさんに関しても、ストレートに官能的な言葉を使ってファンの扇情をあおるようなステージングはしません。

だけど大人の、歳を重ねた男性ならではの色香がむせかえるほど匂い立っているのですよね。

たとえばそれは、普段は腕組みをしてそっぽを向いている恁さんが、ふいにフロアを射抜く鋭い視線。マイク越しに落とされる柳さんの熱い息遣い、目の前にある顔をトントントン、と順に指し示す指先。歯をぐっと食いしばってベースを頭上に振りかぶったり、いきおいよく回転させるRegaさんの躍動感。

若さの肉が削ぎ落とされ、そのぶん「今」この瞬間を生きている者ならではの成熟した魅力が、色気として垣間見えるのかもしれません。

そこからつづくのは、塊のような音のつぶてをこれでもかと浴びせかける、攻撃的な『VENOM』。楽器隊陣の太くスリリングな音が、オーディエンスに迫ってきます。
VENOM

VENOM

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
前回はじめて先行を聴いたときには、目の前が真っ白になって「何が起きているのかわからなかった」のだけれど、この日は頭から最後まで、音を遊び尽くせてとってもたのしかったです。上手と下手へ駆け回るモッシュタイムにヘッドバンギング、会場の熱気はとどまるところを知りません。

またギターの音がすごいのです。対バンライブをするときの恁さんの足元は、画用紙に板チョコを2枚ぺたっと貼り付けたくらいのちいさな機材があるだけなのですが、今日はそれがもうちょっとした要塞みたいになっていて。

楽器や機材のことはお名前もなんにもわからないけれど、いつもは「ギュイーーン!!」な音が、この日は「ギュアラゴギグギュイイイイイン!!!」なのです。圧がすごいのです。

終盤

どの曲のあとだったか、柳さんがいったん下手へ捌ける瞬間がありました。恁さんがぽろんぽろんとギターを奏で、Hakuyaさんが優しくドラムを叩いて時間をそっと支えるもと、Regaさんがぽつぽつと思い出を語り始めます。

「俺と恁はもともと別のバンドだったんだけど」「恁から『Mr, Human Error』を聴かせてもらって」……あんまり記憶に自信がないのですが、Regaさんがこのバンドに触れたときのエピソードを語っていらっしゃいました。

そうして柳さんがふたたびステージに戻ってきたタイミングで「あとは頼んだ」と小さく肩を叩いてセンターへ送り出し、くるりと後ろを向いて汗を拭います。

柳さんが客席をみすえながら語るのは一年前の今、二年前の今、それからバンドを立ち上げた三年前の今。夢を追うことの大切さを説くメッセージへ、会場中が耳を傾けます。

「俺たちはこの曲から始まった」
最後の言葉が落ちたあと、すっ、と一呼吸を置いて告げられた曲名は『Answer』。音源化されていない初期の楽曲に、あちらこちらで小さな歓声があがります。

歌詞に散りばめられたバンドの軌跡を、聴き手にも惜しみなく手渡してくださるその姿勢に、またしても胸がぎゅっとします。旧体制のときからこの曲のベースラインがすごく好きだったのだけれど、Regaさんが弾くとこうなるんだなあ……と、感慨深くなりました。

そのあとは『barbarism』『炯眼、人を射る』と畳み掛け、この日のステージは終了。

しかし誰もその場から動こうとはせず、自然とアンコールが沸き起こりました。程なくして、どこかほっとしたような佇まいのメンバーさん達が、ふたたびステージに戻ってきます。

はじめはロングカーディガンを羽織っていた恁さんも、そのうちタンクトップになり、最後はもう上半身裸で吠えながらギターをかき鳴らしていました。とってもごきげんな恁さん。

アンコール

「アンコール何やる?本当に、今日はアンコールやるつもりなかったからさ、曲決めてないんだよね。何やる?何聴きたい?」

「ヒューマンエラー!」
会場からリクエストが飛ぶと、それを聞き間違えた柳さんが「やなな?」と自分のニックネームを答え、笑いを誘います。

「あ、ヒューマンエラーか!ヒューマンエラーは今日同期がないんだよなー。今日やった曲の中で」、そう返すとなりではRegaさんが「ちなみにこれが今日のセットリスト!」と、黒マジックで曲順の書かれた紙をかかげて見せます。

「ミラーミラー!」
「ミラーやる?じゃあミラーでいいけど、Hakuyaさん、ミラーいけますか?よし、じゃあ最後にもう一回それやって……今日終わろうぜ」

MIRROR MIRROR

MIRROR MIRROR

  • Bless This Mess
  • ロック
  • ¥250
激しい拳にあわせてOiコールが湧き上がりました。はじめて公開された当時はどちらかといえば綺麗にまとまっていたノリが、ライブの回数を重ねるごとに、どんどん熱くなっているのを感じます。

アンコールのHakuyaさんのドラムが、もうもうもう、ものすごく格好よくって。熱くて、力強くて、聴き手の背中をいきおいよく押してくれる音なのです。だけど叩いている本人に苦しそうな様子はまったくなく、口をおおきく開けて笑いながら、楽しそうに演奏されるのですよね。

ああ、本当に楽しかった……泣いて、笑って、へとへとになるほど汗をかいて。Regaさんと恁さんがドラムセットのところに足をかけて後ろ向きに演奏するのも、柳さんが恁さんをステージ下に落とそうとするのも、それをかたくなにこらえる恁さんも、ぜんぶ楽しかった。今までのライブで今日がいちばん。

イントロが鳴るたび、柳さんが歌い出すたびに驚喜して、誰も彼も一緒になって拳を突き上げる景色が、どんなにまぶしかったことか……とにかく今日は最高の一日でした。

懐かしい曲の衰えぬきらめきに触れ、新しい曲へまたいっそう期待をつのらせて、もうもうもうこの日のことはずっと忘れません。 メンバーさんもプレイアーさん達も、本当にありがとうございました。

ブレメスだいすき!

物販

ちなみにちなみに、物販では『[blind Circus.]』を購入しました。ケースを開いた瞬間、おもわず「わあ、かっこいい!」と声が出てしまうセンスのよさ。

blind Circus.

blind Circus.

CDの円盤もジャケットと同じ瞳のデザインなのですが、まんなかの穴が開いている部分がちょうど瞳孔のように見えるのがたまりません。

ジャケット裏のアーティスト写真、フォント、歌詞カード裏のアートワークやラストページのメッセージ、や……柳さん!これをずっと待ってたの!と叫びたくなるような、あまりにも痛々しい歌詞。とにかくすべてが格好よく、何度も手にとって開きたくなる作品でした。

曲の格好良さは言わずもがな、もう今回はすべて好みのど真ん中なのです。これからいっぱい聴き込みます。じっくり聴き込みます。たのしみです!

セットリスト

1.slumber
2.蝋涙に死す。
3.MIRROR MIRROR
4.Freak Show
5.PERSONA
6.old【new】order
7.[blind Circus.]
8.VENOM
9.Answer
10.barbarism
11.炯眼、人を射る。
EN. MIRROR MIRROR

公演情報

BLESS THIS MESS 60分限定無料ワンマン「[blind Circus.]」
恵比寿 club aim